欧州連合(EU)の欧州委員会は(EC)は,電気通信事業者とインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)によるデータ保存に関する指令案を,ベルギーのブリュッセルで現地時間9月21日に発表した。同指令案では,電気通信事業者は固定電話および携帯電話の電話記録を12カ月間,ISPはインターネットを介した通信記録を6カ月間保存するように要請している。

 保存が義務づけられるデータに通信内容は含まれない。またISPは,データの保存によって発生する追加コストの払い戻しを受けることができるという。

 ECによると,EUの約15カ国ではデータ保存を義務づける法律がない。また,法律がある国の場合,保存を義務づけるデータの種類や期間などがまちまちである。さらに,法律がある国の約半数では法律を施行するための規制が整備されていないという。

 ECは,2004年3月のマドリッド列車テロや,2005年7月に起きたロンドン同時多発テロなどを例に挙げ,「同指令案の可決は,テロなどの組織的犯罪に対して統一戦線を張るうえで必要な急務」としている。なお同案の可決には,ECと欧州議会の承認が必要である。

 ECで司法/自由/安全保障分野の副委員長を務めるFranco Frattini氏は,「この指令案は,セキュリティ,プライバシ,個人データなどに関する基本的権利はもちろん,警察当局や通信事業者にも配慮した,建設的かつバランスのとれた草案である。年内に可決できるように全力をあげて取り組んでいる」と述べた。

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