調査内容 2008年第4四半期IT予算の分野別予算額
調査時期 2008年12月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3229件(1207件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,2008年第4四半期(2008年10月~12月)のIT予算額を適用業務やITインフラの分野,ハード/ソフト別などで聞いたところ,適用業務アプリ8分野(その他の適用業務分野を除く)では「SCM」が約2640万円で,今回も業務アプリ分野中の最大の平均値だったものの,前回2008年9月調査での前期2008年7月~9月期の平均予算額から約26%減。「会計」の同46%減に次ぎ,「生産管理」の約24%減とほぼ同率で大幅に予算額が減少した。

 前期より平均予算額が大きく増えたのは「経営戦略系」の約5.7倍(前期は平均約380万円→2008年第4四半期は同約2190万円)と,「人事・給与」の約5.2倍(約270万円→約1400万円)。ただしこの2分野は,ともに前期において平均額が前々期2008年4月~6月期(2008年6月調査)の4分の1~5分の1に下がっている。今期の平均予算額を前々期と比べると,「経営戦略系」は約1.4倍,「人事・給与」は約1.2倍にすぎない。2008年第4四半期の平均予算額が前期より約1620万円(約2.9倍)も増えた「CRM・顧客関連」が,前々期比では約1.5倍で,8分野中最も高い伸び率となっている。

大規模投資分野の中で明の「CRM」と暗の「SCM」「経営戦略」が分かれる

 今回の結果を,1月22日付け記事で報告した「第4四半期予算の分野別前年同期比増減率」,1月23日付け記事で報告した「第4四半期予算の金融危機以前計画と比べた削減率(分野別)」と合わせて見よう。

 平均予算額が目立って大きい「SCM」「CRM・顧客関連」「経営戦略系」の3分野のうち,「SCM」「経営戦略系」は,前年同期比増減率で約25%,危機以前計画比削減率で約30%弱の大幅な削減を喫している。しかし「CRM・顧客関連」は前年同期比で約10%強,危機以前計画比で約20%と,業務アプリ分野の中では比較的小幅な削減率だった。

 投資規模の大きな分野の中で,「SCM」と「経営戦略系」は金融危機に伴う投資カットの津波の第一波の直撃を受けたが,「CRM・顧客関連」はその影響が軽かったと見られる。

インフラ分野,ハード/ソフトは前四半期より平均予算額がアップ

 システム・インフラ7分野(その他のインフラ分野を除く)は,業務アプリ分野に比べて分野間の平均額の差が小さく,変動幅も小さい。前期(2008年7月~9月期)は前々期(2008年4月~6月期)の平均予算額に対して7分野とも約2割~5割減少していたが,今期は前期比で約2%増(運用・危機対策系)~約2.5倍(セキュリティー)。前々期比では約2割減(運用・危機対策系)~約29%増(セキュリティー)という増減率である。

 「既存システムの再構築」の四半期予算は,前期は前々期比で約21%減,「新規システム開発」と「運用・保守開発」は同約28%減だったが,今期は増減率の大小が逆転。「再構築」は前期比で約22%減とマイナスが続いたのに対し,「新規開発」はほぼ前期と同額,「運用・保守開発」は前期比約17%増だった。今期と前々期(2008年4月~6月期)の平均予算額を比較すると,「再構築」は約4割減,「新規開発」は3割弱の減,「運用・保守開発」は約15%減である。

 「ハード購入」と「ソフト購入」も,前期は前々期比でハードが約25%減,ソフトが約11%減だったが,今期は前期比でハードが約20%増,ソフトはほぼ前期と同額。今期と前々期(2008年4月~6月期)の平均予算額を比較すると,ハード,ソフトとも約10%減の水準だ。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム予算(四半期分)の総計を聞いた。新規購入や開発中の案件がなく,四半期のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い,減価償却費のみの場合,それらの本四半期分の総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが,自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「平均の予算額(四半期予算平均額INDEX)」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「本四半期はゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」を4000万円,「5000万円以上1億円未満」を7500万円,「1億円以上3億円未満」を2億円,「3億円以上」を4億円に換算して平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 なお,適用業務分野の「SFA・営業系」と「SCM」と「物流」の3分野は2007年6月調査(2007年4月~6月期),「会計」以外の適用業務分野の7分野とシステム・インフラ分野の「運用・危機対策系」と「ストレージ系」と「アプリケーション(システム)間連携基盤系」は2007年3月調査(2007年1月~3月期)で,回答数が30件未満のため四半期予算額INDEXは参考値。2007年9月調査と2008年3月調査以後今回の2008年12月調査までは,「その他」以外での参考値扱いの分野はない。
 調査実施時期は2008年12月中旬,調査全体の有効回答は3229件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1207件。

図●最新四半期(2008年10月~12月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)
図●最新四半期(2008年10月~12月)の分野別IT投資予算額(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)