日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業の情報システム担当者を対象に行った2007年3月調査で,2007年1月~3月四半期のIT予算額を,適用業務やITインフラの分野,ハード/ソフト別などで聞いた。

 適用業務分野別の予算額は,昨日の記事で紹介した前年同期比増加率と同じく,「会計システム」以外の各分野の回答数がいずれも30に届かず参考値扱いとなった。「会計システム」の1月~3月四半期の予算額は平均2500万円強で,他の適用業務分野に比べるとやや低めに位置づけられた。

 インフラ系の分野別予算額も,回答数30未満で参考値扱いの分野が半数を占めてしまったが,「情報系」と「インターネット系」が約2800万円と比較的高め。参考値扱いの分野の中では「運用・危機対策系」の1月~3月四半期の予算額が4300万円超(昨日の記事で紹介した「前年同期比増加率」は30.2%)で突出して大きな額を占めたのをはじめ,「アプリケーション(システム)間連携基盤系」,「ストレージ系」という前年同期比増加率30%超の上位分野が,予算額でも上位を占めた。

 「新規システム開発」,「既存システムの再構築」,「運用・保守開発」の1月~3月四半期の予算額は,意外なほど僅差であった。「再構築」が約2000万円,「新規開発」が約1900万円,「運用・保守開発」に約1850万円。日本情報システムユーザー協会(JUAS)が4月に発表した最新の「企業IT動向調査2007」の結果では,2004年度実績から2007年度予想まで4年度にわたって,IT予算の内訳が「保守運用費60%強:新規投資40%弱」であまり変動しておらず,“日本企業はIT投資を(他国の企業に比べて)戦略的な新規投資に振り向けていない”という非難の論拠になってもいる。

 本調査ではIT予算の分類を「保守運用」「新規投資」の2分割ではなく,「既存システムの再構築」を追加した3分割で設問しており,JUASなどの調査結果と単純には比較しにくい。しかし本調査で今回示された結果,つまり現状のIT予算が「新規開発」,「再構築」,「運用・保守開発」にほぼ三等分されており,昨日の記事で紹介した「前年同期比増加率」では「新規開発」が約23%増,「再構築」が約13%増,「運用・保守開発」が約8%増という数字からは,日本企業が比較的“攻守にバランスのとれた”IT投資を実践している,と評してよいのではなかろうか。

◆注
 調査実施時期は2007年3月中旬,調査全体の有効回答は811件,うち情報システム担当者の有効回答は336件。
 本文中の「平均の予算額(四半期予算平均額INDEX)」は,選択式回答の「本四半期はゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」(4000万円に換算),「5000万円以上1億円未満」(同7500万円に換算),「1億円以上3億円未満」(同2億円に換算),「3億円以上」(同4億円に換算)に換算して平均した。
 四半期のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い,減価償却費のみの場合も,それらの本四半期分の総計額について回答を求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが,自社内の開発・運用要員の人件費は含めないものとした。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。

図●最新四半期(2007年1月~3月)の分野別IT投資予算(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)