調査内容 2007年第2四半期IT予算の分野別予算額
調査時期 2007年6月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 1661件(659件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数

 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者を対象に行った調査で,2007年4月~6月四半期のIT予算の額を,適用業務やITインフラの分野,ハード/ソフト別などで聞いたところ,「新規システム開発」には平均約3510万円(前回2007年3月調査の1月~3月期の約1880万円に対して約1.87倍),「既存システムの再構築」には同約2870万円(3月調査の約2020万円に対して約1.42倍),「運用・保守開発」には同約2410万円(3月調査の約1850万円に対して約1.30倍)と,新規システム開発へIT投資予算を集中する傾向が顕著に示された。

 ただし,2カ月前に実施した2007年4月調査での「上半期予算」(新規開発は約3800万円,再構築は約2200万円,運用・保守開発は約1700万円)に比べると,やや「新規開発」への予算の集中度は低い。「上半期予算」調査では「回答者の担当・関与しているシステム」の範囲で回答を求めたのに対し,今回調査や3月調査の「四半期予算」調査では「回答者が予算執行・承認の権限を持つシステム」の範囲について回答を求めている。予算執行・承認の権限者として,現実的な「再構築」や「運用・保守開発」にもバランスを取って配分したいという意向が見える。

 8月1日付け記事に示したように,今回調査した2007年4月~6月四半期の,回答者が自身の執行・承認の権限を持つ予算総額の全体平均は約4430万円,前回2007年3月調査(2007年1月~3月期)では約3840万円だった。また8月6日付け記事で紹介したように,今回の調査および2007年4月調査の「上半期予算増減率」では,「CRM」「経営戦略」「SFA」の3分野が,前年同期比で特に大幅な予算増の対象とされていた。

 今回調査でも前回2007年3月調査と同じく,適用業務アプリケーション分野の回答数がやや少なめで,「SFA」を含む3分野の回答数が30に届かず参考値扱いとなった。アプリケーション分野の全体の傾向は今回の結果も前回調査と似ており,分野あたりの平均予算は2000万円~3500万円のレンジにある。平均予算額が最も大きいのが(参考値だが)「SCM」というのも3月調査と同じ。予算増減率と同様,今回は平均額でも「CRM」や「SFA」(参考値)が上位に進出したが,これは3月調査で約3400万円(参考値)だった「物流システム」が今回は2400万円弱(参考値),約3150万円(参考値)だった「生産管理システム」が今回は2000万円弱,など,他の分野で(前回は参考値だが)平均予算額がやや減った結果と言える。

 むしろ注目したいのは,ITインフラ系の平均予算額の地盤沈下だ。「運用・危機対策/ビジネス・コンティニュイティー系」「アプリケーション(システム)間連携基盤系」「ストレージ系」の上位3分野は,ともに前回回答数が30未満の参考値だが,前回より約1500万~2000万円弱の大幅減。「情報系」以下は前回も回答数が30以上で有効範囲だったが,やはり約1000万~1500万円弱の減少となっている。さらに「ハード購入」と「ソフト購入」も,前回2007年3月調査での「ハード」約1840万円が約800万円ダウン,「ソフト」約1420万円が約500万円ダウンと,揃って約4割減った。

 4月を年度初めと見れば,前回2007年3月調査の対象は2007年度の第4四半期でIT投資の山,今回調査の対象は2008年度の第1四半期でIT投資の谷とされる時期である。その意味では3月調査より各分野の平均予算額が下がるのは当然だ。しかし,「予算総額の全体平均」は3月調査の約3840万円から今回は約4430万円とむしろ増えていることを考えると,IT投資の選択と集中が今四半期は顕著になった,との見方も必要だろう。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,何らかの予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム予算額(四半期分)を分野別に聞いた。新規購入や開発中の案件がなく,四半期のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い,減価償却費のみの場合,それらの本四半期分の総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが,自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「平均の予算額(四半期予算平均額INDEX)」は,選択式回答の「本四半期はゼロ」を0,「100万円未満」を50万円,「100万円以上300万円未満」を200万円,「300万円以上1000万円未満」を650万円,「1000万円以上3000万円未満」を2000万円,「3000万円以上5000万円未満」(4000万円に換算),「5000万円以上1億円未満」(同7500万円に換算),「1億円以上3億円未満」(同2億円に換算),「3億円以上」(同4億円に換算)に換算して平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 調査実施時期は2007年6月中旬,調査全体の有効回答は1661件,うち情報システム担当者の有効回答は659件。

図●最新四半期(2007年4月~6月)の分野別IT投資予算(回答者が予算執行・承認権限を持つ範囲)