2010年、IT業界は歴史的な転換点を迎えたとされる。実際にどんな転換点だったのか、ITproに掲載した数多くの記事の中から、最もよく読まれた記事のアクセスランキングをもとに振り返ってみよう。
ここでは、ITproに掲載された、すべての記事を対象にアクセス数を比較し、上位20位までを「ITpro総合ランキング」として掲載した。同ランキングで最も目立つのは、米グーグルが提供するモバイル端末用OS「Android」に関する記事が、ほぼ半数を占めていることだ。
Androidに注目が集中
総合ランキングに登場するAndroid関連ニュースの特徴は、最新機種のレビューやAndroid向けアプリケーションの開発記など、記者による“体験談”が圧倒的に多いこと。総合ランキング1位の「【Androidレポート】出そろった国内Androidスマートフォン3機種を比較する」をはじめ、5位の「【星暁雄のAndroidウォッチング】IS03を1週間試して見えてきたこと、UIの洗練が魅力、使い勝手に「慣れ」が必要」、12位の「【記者の眼】Androidアプリ開発に24時間で挑戦してみた」などだ。
スマートフォン分野では当初、米アップルのiPhoneやiPadなどが話題の中心だった。だが、2010年秋以降、携帯キャリア各社がAndroid搭載端末を本格的に投入してからは、多くの人が次々と登場するAndroid搭載端末の“実力”を気にかけたようだ。Androidの登場により、SIMロックの議論が活発化したことを受け、【Networkキーワード】SIMロック」も、15位にランクインしている。
Androidといっても、携帯端末だけとは限らない。総合ランキング4位の「【「Android」をx86パソコンで動かしてみよう】話題の携帯向けOS「Android」をx86パソコンで動かしてみよう」など、手元のPC上でAndroidを動かしてみる記事も、良く読まれている。
Linuxなどフリーソフトも人気
Androidに次いで、総合ランキングで多くの席を占めたのが、Linuxなどフリーソフトに関する記事だ。総合ランキング3位に「【注目のフリーソフト/シェアウエア】強力な無料のデフラグ・ツール「UltimateDefrag」」が入っているほか、「【インストール完全ガイド】CentOS 5.3」が9位に、「【インストール完全ガイド】Fedora 12」が12位に、それぞれランクインしている。
スマートフォン分野でAndroidが台頭してきたように、PC分野でも米マイクロソフトのWindowsを中心とした世界から、Linuxといった利用者自らが工夫しながら利用する世界が広がってきている様子がうかがえる。
消費者向けテクノロジー主導が鮮明に
IT業界が歴史的転換点を迎えているとする理由の一つが、携帯電話やソーシャルネットワーキングに代表される消費者向けテクノロジーの進化速度が高まっていることと、その影響力の大きさだ。ITpro総合ランキングの上位を、AndroidやLinuxなどが占めていることは、まさに消費者向けテクノロジーがIT業界を主導し始めたことの表れだろう。
もっとも、Android端末などの使い勝手は、端末側の機能はもちろんながら、各種サービスを提供するバックエンドのシステムとの連携で実現されている。いわゆるクラウドコンピューティングである。総合ランキングでは、「【Networkキーワード】クラウド・コンピューティング」が18位に顔を出している。
新しい端末にしても今後は、電子書籍や電子クーポンを届けるためのプラットフォームとして、ビジネスの世界に取り込まれていく。クラウド側でどんな仕掛け作りが本格化していくのか。2011年は“雲の内側”にも注目したい。