米Googleのサービスを巡って、世界の規制当局が監視の目を光らせている。Googleは米国時間2010年2月23日、同社検索サービスの商慣行について欧州の企業3社が苦情申し立てを行ったことを欧州委員会(EC)から通知されたと発表した。

 3社とは、英国の価格比較サイト「Foundem」、フランスの法関連検索エンジン「ejustice.fr」、そして米Microsoft傘下のショッピング・サイト、ドイツ「Ciao! from Bing」。欧州委員会はこれを受けGoogleに意見を求める書簡を送付し、この問題に関する予備調査を開始した。競争法担当と緊密に協力して調査を進めていく意向だ。

 「Google Book Search(Google Books)」「Google News」「Street View」など、Googleのサービスを巡っては世界各地で問題が浮上している()。英Financial Timesの記事は、今回の欧州委員会の動きは、世界の規制当局が巨大化するGoogleへの監視を強化していることの表れだと報じている。

表●Googleの商慣行に関する規制当局の動向
2007年7月 オーストラリアの規制当局、検索エンジンのスポンサード・リンクに関して虚偽的行為があったとしてGoogleを提訴
2007年12月 米連邦取引委員会がGoogleのDoubleClick買収提案を承認。競合企業やプライバシー擁護団体、ユーザーの行動情報をGoogleが1社に独占されるとして懸念を表明
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2008年3月 欧州委員会もDoubleClickの買収を承認。Google、世界のオンライン広告市場で勢力拡大
2008年9月 Google、欧州連合の要請に応じる。検索ログの保存期間を従来の18カ月から9カ月に短縮
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2008年11月 GoogleとYahoo!、検索広告事業の提携を断念。米司法省が「提携阻止のためには提訴も辞さない」と両社に通知していた
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2009年8月 GoogleのEric Schmidt CEOがAppleの取締役を辞任。米連邦取引委員会が同氏のGoogle、Apple取締役兼任が独占禁止法に抵触するとして調査していた
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2009年8月 イタリア当局が「Google News」を調査。オプトアウトしなければニュースがGoogleサイトに表示されてしまうことを問題視
2009年9月 書籍デジタル化問題で、ドイツ政府が米国以外の当局として初めて米地裁に反対意見書を提出
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2009年11月 スイス政府、Street Viewのプライバシー保護措置が不十分としてGoogleを提訴。スイスで同サービスを開始してから2カ月後
2010年2月 欧州委員会と米司法省、MicrosoftとYahoo!による検索事業の提携を承認。Googleによる検索市場1社独占を懸念した決定
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2010年2月 欧州委員会、欧州3社の苦情申し立てを受け、Googleの検索サービス/検索広告に関する予備調査を開始
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資料出典:英Financial Times

潤沢な資金であらゆる分野に進出

 これまで欧州委員会は米国の大手ハイテク企業に厳しい措置をとってきた。「そうした経緯を振り返れば、同委員会がここまでGoogleの行動を放置してきたことにむしろ驚く」。そう述べるのはMicrosoftの動向に詳しい、米Windows IT Pro誌のコラムニストPaul Thurrott氏

 同氏は、今回の欧州委員会の行動によって、Googleはこれから長い苦難の時代に入るのではないか、と見ている。同氏によれば、Googleは検索市場や検索広告市場を独占しており、それによって得た資金で同社は、電子メール、PIM、オフィス・プロダクティビティ・サービス、スマートフォンなど、あらゆる分野に進出している。

 今の同社には、不採算事業を維持していくための資金が潤沢にあり、この状況は15年前のMicrosoftに酷似しているという。「唯一違うのはGoogleの成長速度がMicrosoftのそれよりもはるかに速いこと。しかしそうした巨大な力には、規制当局が必ず監視の目を向ける」(同氏)