ファーストリテイリング
執行役員グループCIO 岡田 章二氏

写真・的野 弘路
 以前、あるITベンダーの担当者が、提案書を持ってきたときのことだ。「御社の課題は××や△△など…」と、A4ファイル40ページの提案書のうち、ユニクロ向けシステムの欠点に関する内容が20ページもあった。優れた点など何一つ書いていない。そのくせ担当者の考える改善策がどうだったかといえば、魅力的な内容は見当たらず、がっかりしたことを覚えている。

 ユーザー企業のシステムに関する課題だけを調査・分析し、ソリューションを提案するのが営業の仕事だというのは、勘違いもはなはだしい。他人の短所を見付けることは割と簡単なことだ。欠点探しが上手なだけの“コンサルタント”は不要である。

 私は、当社の優れた点を見抜く力を備えたベンダーを信頼する。我々の優位性を見抜けるというのは、それだけ技術動向や他社のシステム化の事情に詳しい証拠。当社の業界や業務に精通しているからこそ、我々を褒めることもできる。

 他人を褒めることは難しい。褒め上手かどうか。これがベンダー選びの物差しの一つになる。ユーザー企業に媚びて持ち上げろと言っているわけではない。

 ITベンダーの営業担当者は、まずはユーザー企業の長所をきっちりと押さえるべきだ。その上で課題を見付け出す。それから長所を伸ばすための方策や、弱点の補強策を練るのが提案営業というものだ。

共に考え、物申す存在になれ

 私がソリューションプロバイダの担当者に求める人材像は、我々と一緒に物事を考え、時には文句を言うひと。IT版“ソムリエ”のようなイメージだ。

 競争力を高めるためのIT化を進める場合、正解はどこにもない。こうした難題に向かって、我々と共に考える姿勢があるかどうか。こうした観点でソリューションプロバイダを選ぶ。

 ユーザー企業に意見することは、勇気がいることかもしれない。でも我々だって間違うことがある。だからこそ、口出ししてくれるソリューションプロバイダと組む価値があるのだ。

 物申すソリューションプロバイダの人材は、任せられた仕事に責任感を持ち、それを成功させるために創意工夫を凝らす。そうした自発的な姿勢で仕事に臨むベンダーが参加したプロジェクトは活気があり、結果としてうまくいく。

 活気あるプロジェクトは、我々だけでなくITベンダーにとってもメリットがある。ITベンダーの担当者だって「顧客が喜ぶシステムを提供する」といった、システムの仕事の醍醐味を味わえる。私も以前はITベンダーのエンジニアだったので、その大切さを分かっているつもりだ。


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