日本マクドナルド 執行役員インフラシステム本部 前田 信一氏 写真・中野 和志 |
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先行事例を当てはめようとするのではなく、例えば「5年後の御社のシステムはこうあるべきです」という話をしてもらいたい。5年先の話をするのも、それを実現するのも難しい。だからこそ魅力がある。もちろん、こうした難題をITベンダーに丸投げする気はない。ITベンダーとの議論を重ね、現状の問題を共有し、成果物を一緒に作っていきたいのだ。
システム構築サービスの契約形態でも、人月単価をベースにしたワンパターンなものでは満足できない。例えば人月単価でベンダーが積算すると20億円かかる開発プロジェクトがあったとしよう。このとき当社がITベンダーに支払う額を5億円とし、残り15億円は他社から回収するとの発想があってもいいと思う。ITベンダーは当社向けのシステムをパッケージにするなりサービス化すれば、それが可能だろう。
ベンダーにとっては、15億円を回収できる保証がないことは分かる。こうしたリスクは何らかの形でシェアできる。当社は安価にシステムを構築できる分、ベンダーの求めるプロジェクト要員を投入するなど、さまざまな面で全面協力する。自分たちの得ばかりを考えているわけではなく、パートナーとして損得を分かち合いたい。
こうした話をしても乗ってこないITベンダーが多いが、ゼロではない。大手も中小も含めて数社ある。現在取り組んでいる基幹系システムの再構築プロジェクトを担当する数社と、バリューとリスクをシェアする契約を結んでいる。
答えのない戦略システムを一緒に作ろう
基幹系システムだけでなく、今後構築する戦略システムでも、チャレンジ精神あふれるITベンダーの参加を求める。当社は今年2月に、NTTドコモと携帯電話を使った決済システムで業務提携すると発表した。ここで必要な決済システムの整備はもちろん、それと連動する新しい顧客分析システムの構築にも取り組む。“尖がった”システムを作ろうと燃えている。
だがこうした類のシステムの要件は固めにくいものだ。走りながら考えることになる。それだけに昨今のITベンダーが引き受けてくれるかどうか少し心配だ。「要件が固まっていないシステムの開発はリスクが高い」と断られるかもしれない。でも困難なこと、初めてのことにチャレンジしないソリューションプロバイダが、競争力のある企業になれるはずはない。
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