日興シティグループ証券
常務執行役員情報システム本部長・CIO 池原 進氏

写真・柳生 貴也
 手を組みたいのは、新たなサービスモデルを編み出せるソリューションプロバイダである。従来の契約や提供の仕方に固執せず、我々の望む形態でシステム関連サービスを提供してもらいたいということだ。

 私がアクサ生命保険のCIOだった2005年当時、新たなサービスモデルを外資系ITコンサルティング会社と共同で生み出したことがある。基幹系システムの開発・保守コストを抑えつつ品質確保を図るため、その会社の日本法人とSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を結び、開発実務をその会社のインド拠点のエンジニアに任せるという枠組みだった。

 前例が日本国内にない中、我々の要求にその会社の担当者は応えてくれた。やはり新たなことにトライしてくれる人材は魅力がある。その担当者とは今でも付き合いがある。

 新しいことをやるとなると、多くのリスクが付きまとう。でも従来のやり方で得られる以上の経営効果を期待できるからこそ、挑戦しなければいけない時がある。ITベンダーにはパートナーとして、我々と一緒にやる器量があるのかどうか。もちろん、金を払っている立場をかさにして、ITベンダーにリスクを押し付ける気はない。そのような関係の中で、いい仕事ができるはずがないからだ。「成果もリスクも共有しよう」。ITベンダーにはそう言いたい。

日本のベンダーには商売っ気が足りない

 「スマート・ソーシング」。この言葉を使って、ITベンダーの活用の在り方を考えている。当社のシステム部員が手掛けるべき業務や、外部に依頼すべきことを明確にして、賢いソーシングをしようという取り組みだ。その一環で既存のベンダーとの関係も見直すし、新たなベンダーも発掘したい。ところが、付き合いのないベンダーの営業担当者が当社を訪問することはほとんどない。それで困るということはないが、商売っ気がないなとは思う。

 また悩ましいのは、10~50人規模のシステム開発プロジェクトを請け負えるベンダーが少ないことだ。このクラスのプロジェクトに投入する人材をうまく配置できないのか、なかなか引き受けてもらえない。受注金額が小さいため軽視しているのかもしれないが、この規模の開発ニーズは多いはず。大規模システムを構築できるかどうかだけが、ITベンダーの実力を示すものではない。

 最近の日本のITベンダーは、総じて中途半端という印象だ。ソリューションプロバイダを標榜するなら、顧客に優秀な人材を供給することで勝負するしかないはず。エース級をR&D部門だけに抱え込まず、営業や開発の現場に送り込むべきだ。


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