近鉄エクスプレス 常務取締役 牛尾 榮治氏 写真・柳生 貴也 |
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当社は昨年5月、全世界で利用する基幹系システムを使い、貨物追跡データや当社倉庫で預かっている品物の入出庫データなどを、顧客に対してリアルタイムで提供できるようにした。この世界共通システムの構築を担当したのがインドの大手SIerだ。
このインドの大手ベンダーの営業担当者は本当に熱心だった。コンペの段階の話だが、同社の担当者は当社のWebサイトに300回以上アクセスしていたことがシステムログから分かった。「案件の獲得に必死なんだ」と感心した。
現在の日本のITベンダーはどうか。「長い付き合いがあるから大丈夫」と高をくくっていたとしたら、まずいと思う。インドのベンダーは、案件を獲得するために必要な情報を、さまざまな手段を講じて収集し、それを提案に生かしていた。彼らは確実に、ソリューションプロバイダとしての競争力を高めている。
自社都合ではなく顧客優先に感銘
エンジニアの調達能力が高いかどうか。これも、ITベンダーを選ぶ際に重要なポイントだ。当社では、基幹系システムの一部でニッチな開発ツールを導入している。基幹系システムを作り直す際、コンペに参加していた日本のITベンダーの担当者からは「メジャーな製品に置き換えるべきだ」と指摘された。
ITベンダーからすれば、ニッチな製品を扱える技術者を集めるのに苦労するのは目に見えている。製品の将来性を考えれば、妥当な意見かもしれない。ところがインドのベンダーだけが「なんとかする」と我々に約束した。当社が使っているツールに詳しいエンジニアが、その会社にいなかったにもかかわらずだ。そのベンダーは社内リソースの都合よりも、我々の要求に応えることを優先させたわけだ。さまざまなコネクションを使ったのだろう。当社が求めるスキルを備えたエンジニアを世界中から集め、しっかり約束を守った。
しかもこのインドのベンダーのプロジェクトメンバーは、我々が作成したプロジェクト計画書に対して、「この通りにいくはずがない」と心の中で思っていたフシがある。だから「我々の言いなりにはならず、きっちりと意見する」との姿勢で仕事に臨んでいた。それが頼もしかった。
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