ITリーダーは自らの成功のために,そして企業の成功のために何を成すべきだろうか。米ITリサーチ会社ガートナーのアナリスト,Dale Kutnick(デール・カトニック)氏が,今注目の八つの領域それぞれについて解説する。最終回のPart8では,プロジェクトマネジメントと組織のあり方について取り上げる。Dale氏は「プロジェクトのポートフォリオ管理のテクニックを身につけてほしい」と述べる。(構成=ITpro)


 最後に取り上げるプロジェクトマネジメントと組織ですが,これもまた,数年後に向けて注力したい分野です。人材の管理に関わるだけに,中長期的な視野で考えるべきです。

 2009年までには間違いなく,ビジネス分野の人材をIT組織に入れることが必要になるでしょう。過去3年間を見ると,アメリカやヨーロッパでCIOになった人々は,IT組織の出身ではありません。100%IT組織以外の出身,とわけではありませんが,およそ50%がビジネス側の経歴を持つ人なのです。

プログラム&ポートフォリオ管理

2008年までにプロジェクトの計画・優先順位付け・適切な実施をサポートするポートフォリオ管理のテクニックやツールに精通すべき


 ITをマネジメントするためには,ビジネスや経済性を理解する必要があります。コストと,投入した効果,結果を理解しなければならないのです。ITはもはやビット,バイトの世界に閉じたものではないのです。

 もちろん,技術も認識しなければなりません。ITベンダーに騙されるようでは困るのですが,基本的にITリーダーは“ビジネスの人”でなければいけません。ビジネスの経験が全くない人にマネジメントさせるのは正直,難しいです。特にアウトソーシングの決定などはビジネスに立脚した人材が担当するようになると思います。ITのスキルは一部のパートとして持っている,というような人です。

 そうした人たちが,社内で複数,同時に進行しているプロジェクト,つまりプロジェクトの総体からなるプログラムを管理しうるのです。ビジネスの観点からプロジェクトの優先順位を決定し,限りある社内外のリソースを適切に振り分け,進行に応じて柔軟に対処する。ビジネスに精通し,ITのことを知るリーダーは,こうしたプロジェクトのポートフォリオ管理のテクニックを身につけられることでしょう。

 25歳未満の人たちを見ていると,ほとんどの人たちはそこそこのITスキルを身に付けていると思います。例えば私の子どもたちは,昔のIT部門の人たちより,よっぽどスキルがあると感じています。FORTLANやCなどといったプログラミングができる人は多くないでしょう。もっとも,そんなスキルは今後さほど必要とされないかもしれません。しかし,少なくとも音楽をダウンロードするということは一瞬にしてやってのけるのです。アプリケーションをあちこちから取ってきて,マッシュアップによるアプリケーションを作ってしまうのです。私の11歳の娘ですら,そんなことをしています。

 ますます多くの若い人たちが,基本的なテクニカル・スキルを持ち,しかもビジネス・スキルも持ち合わせることになります。そうした人たちが,IT組織に大きな変化をもたらすでしょう。この人たちは,ITのスキルを持った上で,ビジネス側の人たちとコミュニケーションできる,まさにこれからのIT組織に必要なスキルを持ち合わせた人たちだからです。


■ITリーダーがとるべき八つのアクション 目次

総論:ITリーダー、成功へのエール 
Part1:ビジネス・インテリジェンスと情報管理 
Part2:エンタープライズ・アーキテクチャ 
Part3:アプリケーション管理 
Part4:ビジネスプロセス改革 
Part5:IT基盤&運用 
Part6:セキュリティ&リスク管理 
Part7:ソーシング&ベンダーリレーションズ 
Part8:プログラム&ポートフォリオ管理