ITリーダーは自らの成功のために,そして企業の成功のために何を成すべきだろうか。米ITリサーチ会社であるガートナーのアナリスト,Dale Kutnick(デール・カトニック)氏が,今注目の八つの領域について解説する。今回は,「Web2.0」がエンタープライズ・アーキテクチャに及ぼす影響を紹介する。(構成=ITpro)



ガートナー  アナリストのDale Kutnick(デール・カトニック)氏

 前回説明したビジネス・インテリジェンスと情報管理の分野はいわば社内の領域ですが,変化は顧客と直面している領域でも存在します。消費者でもBtoB(企業間取引)の場合でもそうですが,Web2.0という新しい革命の影響を大きく受けています。「Web1.0」は一方的なインタラクションでした。Webサイトを立ち上げ,顧客に情報を得てもらう。Webサイトで顧客からの注文を受ける,あるいは声を受け付けるといった形です。

 Web2.0はこのやりとりを2ウェイにしていきます。代表的な例がフリーの百科事典である「Wikipedia」やblogでしょう。顧客は単に情報を得る,あるいは注文を入れるだけではなく,何らかのフィードバックを提供していくわけです。フィードバック・メカニズムがWeb2.0のポイントです。GoogleやYahoo!がそうしたサイトの代表的な例ですが,企業が学ぶべきところは非常に多いでしょう。

 最近コミュニティ・サイトの「MySpace.com」やオンデマンド・ビデオ共有サイトの「YouTube」が台頭してきています。MySpaceは,米News Corporationの代表,ルパート・マードック氏が10億ドルも投じました。Googleは3年契約で9億ドルを払ってMySpaceでの広告スペースを得ました。とにかく,財がたくさん集まってきています。

エンタープライズ・アーキテクチャ

2008年までに,Webを利用して顧客視点の業務改革が可能なアーキテクチャを実装すべき


 Webが新しい状況を生んでいます。次世代の消費者,12歳から30歳の人々は今,情報のやり取りを十分にやっていける環境の中にいます。企業は消費者が発する情報を,カスタマーサービスに活用できます。情報を使ってオペレーションやビジネスを「Webスピード」で拡張することになるわけです。

 BtoBも例外ではありません。Web2.0型のインターフェースを,ある不動産サービス会社が構築しました。消費者が物件に評価点数やコメントをつける仕組みです。アマゾンもこういうことを書籍でやっていますよね。消費者が書籍のレーティングをして,皆さんはそのスコアを見ますよね。

 あるメディア企業は,世界各地にいるフリー・ジャーナリストから記事を募るビジネスを始めました。Webサイトで何の記事を出すべきか決定する際にWebでレーティングをします。例えば中国での事件に関する記事へのアクセスが多い,あるいはイラクでの最新情報についての記事へのアクセスが多ければ,それを検知し,それによりWebサイトをつくっていくというWeb2.0型のコンセプトです。

 ただ,多くの企業はまだそこまでは行っていないと思います。やはり中心はBtoC(消費者向けビジネス)です。しかし今後はブレークスルーが予測できます。例えばビジネス・サービスが他の企業によってレーティングされるということが考えられます。

次回は,アプリケーション管理について解説します


■ITリーダーがとるべき八つのアクション 目次

総論:ITリーダー、成功へのエール 
Part1:ビジネス・インテリジェンスと情報管理 
Part2:エンタープライズ・アーキテクチャ 
Part3:アプリケーション管理 
Part4:ビジネスプロセス改革 
Part5:IT基盤&運用 
Part6:セキュリティ&リスク管理 
Part7:ソーシング&ベンダーリレーションズ 
Part8:プログラム&ポートフォリオ管理