ITリーダーを成功に導く八つの術(すべ)を,米ITリサーチ会社であるガートナーのアナリスト,Dale Kutnick(デール・カトニック)氏が説く。Part3では,企業内にある多数のアプリケーションをどう管理すべきかを解説する。Dale氏は「2009年までに既存アプリケーションを10%削減すべきだ」と提言する。(構成=ITpro)
アプリケーション管理は企業の俊敏性を支える考え方です。企業全体で複数のアプリケーションをとらえるもので,まず企業内にどのようなアプリケーションがあるか,ポートフォリオを作ります。部門ごとではなく,より横断的に考えるわけです。個別のアプリケーションはエンタープライズ・アーキテクチャとの整合性を考えます。ポートフォリオの一部として各アプリケーションの位置づけを確認します。 これまでアプリケーションは主に企業内に閉じたものでしたが,将来は拡大し拡張していきます。単体の企業だけでなく,パートナー企業や顧客,Web2.0を使っていろんな企業と関係します。 |
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アプリケーション管理
企業内アプリケーションそれぞれの経営価値を判断し,2009年までに既存アプリケーションを10%削減すべき
再利用を考えて,今後のソフト開発はインフラを前提に考えます。インフラの定義は,IT機能でもビジネス機能でもいいのですが,再利用可能なものです。例えばオラクルのデータベースを買い,その上に共通のデータベース・インフラを作ります。社員が10万人いるメーカーであっても,社員が15人の企業であっても同じものを使います。基本的な機能は同じです。ドキュメント・マネジメントの中でそこは共通になっているわけです。ビジネス全体でインフラを再利用可能になります。アプリケーションだけが違うかもしれません。この上で構築するものが違うだけです。インフラを共通化するので,新しいアプリケーションの開発コストを低減でき,かつ俊敏性が高まります。
こういった新しいインフラ構築作業をどう予算として取り付ければよいでしょうか。いきなり古いアプリケーションを引退させることは非常に難しい。そこで,年間10%の古いアプリケーションを引退させていく必要があります。ただ,とっかかりは30%,40%程度実行するかもしれません。
その場合,企業内にある複数のアプリケーションをポートフォリオとして管理していく必要があります。ビジネスポートフォリオと同じです。株と同じです。ライフサイクルがあって,ある時点で価値が高くなって他の時点では価値が下がっています。アプリケーションのライフサイクルを考え,メーカーのサポートを受けられない古いアプリケーションについては,計画的に廃棄する必要があります。
アプリケーションを「資産」の切り口でとらえよ
アプリケーションのライフサイクルは,展開前に考える必要があります。構築時に5年間使用すると考えて,保守費も入れて損益を計算するわけです。ベンダーに払っているライセンス料や保守料ではなく,社全体として,そのアプリケーションのサポートにいくらかかっているのかを見ます。ハードのコスト,特殊なデバイスのサポート・コスト,OSのサポート・コストなどを全部加味します。
例えばこのアプリケーションを使っている人は3人しかいないのに,毎年保守に20万ドルかかっているとします。なぜサポートしつづけるのか,とビジネス面から考え,ユーザー部門の担当マネージャのところに行き,「このアプリケーションは3人使うだけでこれだけのコストがかかっています。一方,90%機能が同じ,別のアプリケーションがあります。こちらに切り替えてもらえませんか」とお願いする必要があるわけです。上級管理職のところに行って,コストの話をしてください。コスト削減になるのです,これだけかかっています,というふうに指摘するのです。コストの話は強力です。IT部門はこうして新規プロジェクトの予算を生み出せます。
≪次回は,ビジネスプロセス改革について解説します≫
■ITリーダーがとるべき八つのアクション 目次
・Part1:ビジネス・インテリジェンスと情報管理
・Part2:エンタープライズ・アーキテクチャ
・Part3:アプリケーション管理
・Part4:ビジネスプロセス改革
・Part5:IT基盤&運用
・Part6:セキュリティ&リスク管理
・Part7:ソーシング&ベンダーリレーションズ
・Part8:プログラム&ポートフォリオ管理