「米国世帯の36.1%は,デジタルTVサービスの選択肢が,4社(FOX,NBC,CBS,ABC)のうち1社以上欠けている。NAB(全米放送事業者連盟)の主張とは裏腹に,米国ではデジタルTVへの移行が遅々として進んでいない」。米国でデジタルTVへの移行を推進するデジタル移行連合(DTC:Digital Transition Coalition)は,米国におけるデジタルTVサービスの普及状況に関する調査結果を発表した。

 DTCが,米Primus Geographicsに依頼して,2004年7月時点のデジタル放送受信可能地域を示した各州の地図を作成したところ,「デジタルTVへの移行が予定より大幅に遅れていることが明らかになった」(DTC)という。

 NABは,デジタルTVサービスへの移行状況を調査中の米連邦通信委員会(FCC)に対して,「放送局は,デジタル放送への移行に積極的に取り組んでおり,デジタルTVの普及に必要な放送インフラの構築を完了した」と述べている。今回の調査は,NABの主張に異論を唱えるために,DTCがFCCに提出した意見書の一部となる。

 DTCのメンバーである米国団体Freedom of Frontierの会長,George Landrith氏は次のように述べている。「デジタルTVサービスは,2002年に本格的に開始しているはずだったにも関わらず,いまだにサービスを利用できない米国人が何百万人もいる。とりわけ,その大多数は地方に集中している」(同氏)

 その他の主な調査結果は次の通り。

・放送局3社のみのデジタルTVサービスを利用できる米国世帯は19.0%

・放送局2社のみのデジタルTVサービスを利用できる米国世帯は 5.8%

・放送局1社のみのデジタルTVサービスを利用できる米国世帯は6.2%

・利用できるデジタルTVサービスが全くない米国世帯は5.1%

 Landrith氏は,「デジタル放送への移行を加速するには,地方放送局にインセンティブを与える必要がある」と指摘する。「例えば,米国議会が上院商業委員会の衛星放送に関する法規制の条項を承認すれば,すぐにでもデジタルTVサービスの普及に一役買うことができる。つまり,地方放送局がデジタル放送を開始していない場合は,衛星放送局が同サービスを提供できるようにするわけだ。そうすると競争が自然発生し,デジタルTVサービスの普及を後押しをするだろう」(同氏)

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