「サンフランシスコの第9巡回区控訴裁は,当社のファイル交換ソフトウエア『Morpheus』が著作権法を侵害していないとの判断を下した」。ファイル交換ソフトウエアを巡る訴訟で控訴裁が地裁の判決を支持したことについて,米StreamCast Networksが米国時間8月19日にコメントを発表した。「控訴裁の判断は,コンテンツ配信の新技術開発を抑制しようとする世界大手エンターテインメント会社28社への一撃となる」(StreamCast社)

 米連邦地裁は,米音楽/映画業界がMorpheusと「Grokster」を訴えていた裁判で,両サービスを合法とする判決を2003年4月に出した。今回控訴裁は,「これらは著作権侵害にあたらない用途が多分にあり,また,自社ソフトウエアをユーザーがどのように使うかを制御できないため,基本的に合法である」とする地方裁判所の判断を支持したという。

 StreamCast社CEOのMichael Weiss氏は,「社会における著作権の役割を尊重している。しかし,米国の基礎となり,この国を偉大たらしめてきたのは革新技術だ」と述べた。「過去1世紀にわたり,エンターテインメント業界は新技術と戦ってきたが,いつのときも正しかったことはない。当社は,当社のソフトウエアがVCRやコピー機と同様,広範囲で合法的に利用をされていること,また,先例や歴史からして有利であることをわかっていた。結果的に,今回の判決で最も恩恵を受ける立場にあるのは原告側だ。エンターテインメント業界は,新技術を取り入れ,ファイル交換技術をデジタル・メディアの主要な配信チャネルとして利用すれば,大衆をつかむことができる」(同氏)

 なお,デジタル・メディアを手掛ける米Loudeyeは,控訴裁の判決に異議を唱える声明を,8月20日に発表している。「ファイル交換技術が合法的に使われている場合が多いと信じているが,大規模な著作権侵害を可能にしてしまうことは明らかだ。市場の成熟にともない,ファイル交換も広まっていく。著作権侵害を防止し,ユーザーを音楽,映画,ゲームの合法的な利用へと導くことが,これからますます重要となる」(Loudeye社Digital Media Asset Protection and Promotion Business部門ジェネラル・マネージャ兼バイス・プレジデントのMarc Morgenstern氏)

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[発表資料(StreamCast社)]
[発表資料(Loudeye社)]