米連邦取引委員会(FTC)は,米国とオーストラリアのスパム送信業者2社を告訴した。FTCが米国時間4月29日に明らかにしたもの。米国のスパム禁止法Controlling the Assault of Non-Solicited Pornography and Marketing(CAN-SPAM)Actに基づいて米政府組織が起こした初の刑事告訴という。

 CAN-SPAM Actは,2004年1月1日に施行された法律。広告メールをスパムとみなす条件を定め,スパム送信者に対しては高額の罰金を科すと規定している。

 FTCが告訴した2社うち1社は,ミシガン州デトロイトに拠点を置く米Phoenix Avatar。FTCによると,偽のダイエット・パッチ販売を目的とするスパムを送信したという。「このダイエット・パッチはまったく効果がない偽物で,価格は59.95ドル。月々の売上高は10万ドル近かった」(FTC)

 Phoenix Avatar社はスパムの発信元を発見されにくくするために,無関係な他人のメール・アドレスを電子メールのreply-toまたはfromヘッダに入れていた。アドレスを悪用された人は,スパム配送失敗時に大量のエラー・メールが届くという被害を受けたほか,ときにはスパム送信者と誤解されたこともあったという。さらにPhoenix Avatar社は,メール配信を拒否できるオプト・アウトの仕組みを提供していなかった。

 FTCが告訴したもう1社は,オーストラリアのGlobal Web Promotions。FTCは,「Phoenix Avatarと同様のダイエット・パッチのほか,“10年~20年は老化の進行を止める”という触れ込みで成長ホルモン入り薬剤『HGH』『Natural HGH』を販売する広告メールを米国の消費者に送った」としている。商品の価格は,ダイエット・パッチが80.90ドル,HGH/Natural HGHが74.95ドル。ただし「成長ホルモンはまったく含まれていない」(FTC)。

 両スパム業者の特定は,アンチ・スパム組織のSpamhausが行った。2004年1月1日以降に消費者がFTCに転送したスパム・メールのうち,49万通がPhoenix Avatar社に,39万9000通がGlobal Web Promotions社によるものという。

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