(Paul Robichaux)

 あなたは米国連邦議会が最近「ある特定の種類のスパムを非合法とする目的の法案」すなわち「CAN-SPAM Act」(スパム対策法)を通過させて,ブッシュ大統領がその法案に署名をしたことはご存知だろう。法律は2004年1月1日に施行された。

 ここでは,あなたのExchange Serverシステムも関係するかもしれないこの法律の中身を検討してみよう。なお,私は弁護士ではないので,あなたが法律を順守しているかどうかを確認するには,有能な法律家のアドバイスを受けること。

気になるスパム対策法の中身
 CAN-SPAM法は,未承諾広告の電子メール(UCE:unsolicited commercial email)だけではなく,広告の電子メールすべてに適用される。そのため,あなたが送る電子メールは,Alan Ralskyのような悪名高いスパマーに適用されるのと同じ制限を受けることになる。それらの制限は,次のような「なんじ××するなかれ」というものを含んでいる。

(1)この法律は,「本質的に虚偽である」または「紛らわしい」ヘッダー情報と一緒にメッセージを送ることを禁止して,スパム・フィルタをやり過ごすためヘッダーを偽造するという手口を実質的に違法とする。
(2)この法律は,人をだますタイトルを使う違反者に対して民事(刑事ではない)的な処罰を規定している。
(3)広告メールの送信者は,受信者が将来のメール送信を拒否できるように,返送先またはWebリンクを示さなくてはならない。受け取りを拒否した人に電子メールを送った場合は民事罰が適用される。
(4)UCEメッセージの本文は,そのメッセージが広告または勧誘であることを明記しなくてはならない。
(5)「性的な」もの(昔も今もあいまいな用語だ)には,連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)が,まだリリースしていない標準に従って,ラベルを付けなくてはならない。
(6)スパマーが辞書攻撃(あらゆる単語や文字を入力して該当するアドレスやパスワードを探す方法)を始めたり,Webからアドレスを収集したり,オープン・リレーを利用したりしてはならない。

スパム対策法でスパムはなくなる?
 これらの禁止と制限に対しては,2つの疑問がある。この法律は,本当にわれわれが受け取るスパムの量を減らすのに役立つだろうか? そしてこの法律は,まっとうな会社にはどんな影響を与えるだろうか? どちらの質問にも「答えるのは難しい」。それは以下のような理由による。

 第1に,メールのインフラを詰まらせるようなスパムの多くは,合衆国の外にいる人や組織の手で送られているということだ。米国の法律を国外に適用することにかかわる問題は,私としては避けておきたい話題である。米国に居ながら,国外にあるスパムの送信元を運用している人に対してはどうするのかも明確ではない。現時点で,私はこの法律はローエンドのスパマー(ハイエンドの法律家を雇えるほど金を稼げない連中)に対しては,そのビジネスを続けられなくできると思うが,一番タチの悪い犯罪者はしばらく居残るだろう。

 第2に,ラベル付けの問題がある。確かに,ラベル付けはユーザーの要求による送信停止を義務付ける条項はかなり明快だ。そして,それらの条項に従わない会社は,もし,だれかが連邦裁に訴訟を起こすほど迷惑に感じている場合,民事上の損害の責任を負うとみなされるはずだ。しかし実際には,大容量のメールをユーザーに送りつけている多くの会社は,外部の業者を使っているので,その外部の業者が自分たちのシステムに必要な変更を施してしまえば,責任から解放されるだろう。この法律の帰結として,多分多くの会社が大量のメール送信業務を下請けに出すだろう。それ以外の会社は,法律順守のために必要な内容を見極めるまで,メール送信を差し控えるだろう。

 この法律と将来可能性がある反響に関する詳しい分析については,「Center for Democracy and Technology」(CDT)が発行する2003年12月12日付けの電子メール・ニュースレター「CDT Policy Post, Volume 9, Number 23, December 12, 2003」(該当サイト)を参照してもらいたい。そして,しばらくの間は,あなたが今使っているフィルタリング・ソフトを削除しないこと。法律が施行されたあとでさえ,私の個人用メールボックスには,まだ毎日100通近くのスパム・メールが届いている。しばらくはスパムが衰えることなく,たくさん届き続けることだろう。