米Javelin Strategy & Researchは,身元詐称による詐欺とオンライン・バンキングの安全性について調査した結果を,米国時間4月5日に発表した。多くの消費者は,オンライン・バンキングを利用する方が詐欺の被害にあう危険性が高いと考えている。しかし実際は,オンラインで請求書の支払いや取引明細を確認することで,詐欺にあうリスクを減らすことができるという。

 調査は,Javelin Strategy & Research社が,米連邦取引委員会(FTC)と米国郵政公社のデータを分析したもの。

 米国では身元詐称による詐欺の被害額が年間,数十億ドルにものぼっており,最も多い手口は,個人情報の盗難による新規口座の開設と,既存口座の不正使用である。その多くは,口座開設勧誘の案内のほか,銀行の取引明細書や個人が書いた小切手など,文書に記載された個人情報を悪用したもの。このため銀行や企業は,取引明細をインターネット上で提供するEBPP(Electronic Bill Presentment and Payment)サービスを充実させることで,身元詐称による詐欺を大幅に減らすことができるという。

 例えば,FTCが2003年10月に発表した調査によると,身元詐称による詐欺の52%は,被害者が1カ月に一度送付される取引明細書を確認したことから発覚していている。しかしその時点では,詐欺が行われてかなりの時間が経過しており,犯人の検挙は困難である。一方,オンライン・サービスを利用する顧客は,1カ月当たり約4回もオンラインで明細を確認しており,詐欺の早期発見に貢献できる。

 Javelin Strategy & Research社創設者兼主任アナリストのJames Van Dyke氏は,詐欺を減らし,オンライン・バンキングの安全性について消費者を啓蒙するために銀行や企業が行うべきこととして,以下の3点を挙げている。

・顧客の教育:オンラインで取引明細を確認するユーザーの方が,詐欺に気付くのが早い。このため,消費者にオンライン・バンキングの活用を促すことで,文書の削減や詐欺の早期発見が可能になる。

・顧客の要望への迅速な対応:金融機関や請求書を発行する企業は,オンラインで取引明細を確認できるようにする一方で,顧客の希望に応じて重要な文書を郵送しないようにすべきである。

・電子メールの活用:電子メールを使って,各口座の取引内容や残高を頻繁に通知することで,詐欺を大幅に削減できる。

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