米IBMと米Adobe Systemsは,ドキュメントのセキュリティ確保に関して提携を結んだことを米国時間7月10日に発表した。Adobe社の「Adobe Acrobat 6.0」ソフトウエア・ファミリの暗号化機能とIBM社のパソコン用セキュリティ・システム「Embedded Security Subsystem」を組み合わせる。

 「両社のセキュリティ機能を統合することにより,ペーパーレスの傾向がますます高まる中で,企業はドキュメントの機密性を確保することができる」(両社)

 Embedded Security SubsystemはIBM社のノート・パソコンやデスクトップ・パソコンに組み込まれている機能で,プライバシ暗号化やデジタル認証に対応する暗号化セキュリティ・チップとダウンロード可能なソフトウエア「Client Security Software」からなる。暗号化/復号に使用する鍵を主記憶ではなくハードウエアに格納することで,「ソフトウエアのみの手法より高い安全性を確保できる」(IBM社)としている。

 提携の対象となるのは,ThinkPadノート・パソコンとThinkCentreデスクトップ・パソコンの一部の機種。Acrobat 6.0のユーザーは,PDF形式のファイルに公開鍵インフラ(PKI)を使ったアクセス制御や電子署名を追加することができる。

 例えば,自動車保険に加入している自動車が事故に遭遇した場合,保険担当調査員が調査結果をThinkPad上でAcrobat 6.0を使って入力し,電子署名を加えて電子認証とともに本社に送る。本社は,受け取ったドキュメントが,特定の担当調査員から送られたものであること,内容がいっさい改ざんされていないこと,送信中に顧客のプライバシが保護されていること,を確信できる。また,万が一調査員のノート・パソコンが盗まれたときでも,顧客の情報はThinkPadのハード・ディスク装置内で暗号化され,保護されているので他人に漏れる心配がない。

 さらにセキュリティを高めるため,Embedded Security Subsystemで指紋照合,パスフレーズ入力,スマート・カード照合といった基準を設定することも可能。これにより,あらかじめ認証を得ているユーザーのみが,PDFファイルを開いて作成し,署名を加えることができる。

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