米IBMと米エネルギー省(DOE)の「National Nuclear Security Administration(NNSA)」が,スーパーコンピュータの研究プロジェクト「Blue Gene」で協力体制を敷く。新型スーパーコンピュータ「Blue Gene/L」を開発するもので,完成は2005年を見込んでいる。IBM社が米国時間11月9日に明らかにしたもの。

 Blue Gene/Lの開発は,IBM社とNNSAの研究所「Lawrence Livermore National Laboratory(LLNL)」が共同で行う。現在最速のスーパーコンピュータより,「少なくとも15倍高速で,電力効率が15倍優れ,設置面積が1/50で済むものを目指す」(IBM社)。演算速度は約200T(テラ)FLOPS(浮動小数点演算/秒)を目標としているが,これは現在の最高速スーパーコンピュータ500台を集めた演算能力を上回るという。

 またBlue Gene/Lの開発は,IBM社が行っている自己復旧/自己管理/自己構成機能を持つコンピュータ・システム,“自律コンピューティング”に関する研究開発の一環でもある。

 国立研究機関の研究者らは,Blue Gene/Lを材料の経年変化や,炎,爆発など国家レベルで関心の高い物理現象のシミュレーションに利用しようと計画している。

 IBM社とLLNLは,「Blue Gene/Lのアーキテクチャは,従来のBlue Geneプロジェクトよりも商業利用に適している」と説明する。大規模な並列コンピューティングを業務/産業分野で利用可能にするためには,消費電力や,コスト,設置面積の大幅な削減が必要であるが,「Blue Gene/Lで用いるスーパーコンピュータの新しい方法論により,これを実現する」(IBM社とLLNL)としている。

 現在のスーパーコンピュータの演算速度は極めて高速だが,膨大なデータを処理するアプリケーションを実行すると,メモリ・アクセスに時間がかかることで速度が低下してしまう。Blue Gene/Lではこの種の処理の高速化を図るため,データ・アクセスに最適化したデータチップ・セルを組み込む。各データチップには演算用と通信用の二つのプロセサを設け,専用のオンボード・メモリを組み合わせる。そして,大規模な一つの処理を小さな処理に分割し,複数のデータチップに一つひとつの小さな処理を分担させる。これによってデータ・アクセスの速度が向上するという。

 なおBlue Gene/Lの開発には,コロンビア大学,サンディエゴ・スーパーコンピューティング・センター,カリフォルニア工科大学も参加する。

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