STマイクロがDSPベースのmp3PROデコーダLSIを開発中，圧縮率は既存MP3の2倍

横田英史

2001.09.20

　仏伊合弁のSTMicroelectronicsが，次世代のMP3コーデック「mp3PRO」をハードウエアで処理するLSIを開発中である。24ビットのDSPやメモリ，D-Aコンバータを1チップに集積する。携帯型オーディオ・プレイヤ向けで，2002年はじめにも市場に投入する。スイスのジュネーブで現地時間9月20日に明らかにしたもの。

　「mp3PRO」はデジタル・オーディオの圧縮・伸長技術である。開発を行っているのはスウェーデンのCoding Technologies。フランスThomson Multimediaと独Fraunhofer IIS（Fraunhofer Institute for Integrated Circuits）がもつMP3の基本特許に，Coding社のコーデック拡張技術を取り入れた。

　STMicroelectronics社は，Coding Technologies社と協力し，STMicroelectronics社の24ビットDSP（digital signal processor）コア「MMDSP+」にアルゴリズムを実装する。

　「オーディオ処理に最適化されたDSPコアを利用することで，mp3PROデコーダLSIは消費電力を抑える。携帯型プレイヤーの電池動作時間を延ばすことが可能になる」（STMicroelectronics社）。

　ちなみにmp3PROは，従来のMP3ファイルに比べ圧縮率を2倍以上に高めるほか，64kbpsのビット・レートで，128kbps並みの音質を実現するところに特徴がある。その結果，標準的な1枚のCDに保存できる楽曲の数を150曲（MP3の場合）から300曲に増やすことができる。またmp3PROではMP3よりも狭い帯域で転送することができるため，低速な回線でも安定したストリーミング配信が可能となる。このためより多くのユーザーがインターネット・ラジオ・サービスを利用できるようになる。

　なおmp3PROはMP3と互換性がある。mp3PROで圧縮したファイルは既存のMP3プレーヤ（ハードウエア，PC用ソフトウエアともに）で再生可能である。またmp3PRO対応プレーヤで既存のMP3ファイルを再生することもできる。