フランスThomson Multimediaが現地時間6月14日に,既存のMP3に比べ2倍の圧縮率を実現可能なMP3コーデックの新版「mp3PRO」をリリースしたことを明らかにした。Thomson社のWebサイト(http://www.thomson-multimedia.com)で評価版「Evaluation Package」の無償配布を始めた。

 オーディオ・ハードウエア・ベンダーなどにライセンス供与を行っていく。

「mp3PRO」は,デジタル・オーディオの圧縮・伸長技術。従来のMP3ファイルに比べ圧縮率を2倍以上に高めたほか,64kbpsのビット・レートで,128kbps並みの音質を実現するところに特徴がある。

 これによりメモリに格納できるデジタル・オーディオの容量が2倍になる,またインターネット・ラジオの放送局にとってはCD並みの音質を保ちながら帯域幅を狭くできるなどのメリットがある。例えば,従来の音楽CDはディスク1枚につき平均15曲程度を保存しているが,mp3形式では150曲,mp3PRO形式では300曲以上が保存可能。

 mp3PROは,オーディオ・データを二つの部分に分けて符号化する。一つは既存のMP3との互換性を保つための部分,もう一つはmp3PRO独自部分である。こうすることでオーディオMP3形式のファイルおよびMP3を扱えるプレーヤとの互換性も確保しており,従来のMP3ファイルをmp3PROのプレーヤで再生することも可能にした。また逆にmp3PRO形式で圧縮されたファイルを従来のMP3プレーヤで再生することもできる。ただし,音質に関しては,mp3Proで符号化および復号化を行った場合が最も高くなる。

 今回配布するのはWindows 95,Windows 98,Windows Me,Windows NT,Windows 2000で動作し,.wavファイルをmp3PROファイルに符号化するソフトウエア。MP3とmpePROファイルの再生(復号化)機能も含んでいる。ビットレートは64kbps。他のビットレートのソフトウエアも順次リシースする。

 mp3PROの開発を行っているのはスウェーデンのCoding Technologies社。Thomson社と独Fraunhofer IIS(Fraunhofer Institute for Integrated Circuits)がもつMP3の基本特許に,Coding社のコーデック拡張技術を取り入れて開発している。

 「mp3PRO」評価版のダウンロードは,Coding社のWebサイト(http://www.codingtechnologies.com/mp3PROzone/index.htm),およびThomson社傘下の米RCAのWebサイト(http://www.rca.com/content/viewdetail/0,1407,EI45159-CI100091,00.html)でも提供している。

 Thomson社は,オーディオ・プレーヤ・ベンダーとmp3PRO対応に関し,協力体制を敷く。RCAブランドのハードウエア製品にも順次組み込む。異なるビットレートの
mp3PRO対応製品も2001年後半に投入する予定という。

 Thomson社によれば,現在携帯MP3プレーヤの出荷台数は1200万台を超えており,パソコンでMP3ファイルを利用している人は2億5000万人にのぼる。

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