米Texas Instruments(TI)が米国時間9月19日に,従来比で圧縮率2倍の新MP3コーデック「mp3PRO」のライセンス供与をフランスThomson multimediaから受けることを明らかにした。Thomson社がmp3PROをハードウエア・ベンダーにライセンス供与するのはこれが初めてという。

 TI社は,DSP(Digital Signal Processors)にmp3PROを組み込む。インターネット対応オーディオ機器に向ける。TI社が現在DSP技術を提供しているベンダーには,ソニー,米RCA,東芝,三洋電機などがある。mp3PRO対応DSPが利用可能となるのは,2001年末の予定。すでにDSPが組み込まれた機器も,ハードウエア構成によってはmp3PROにアップグレードすることが可能。

 mp3PROは,デジタル・オーディオの圧縮・伸長技術。従来のMP3ファイルに比べ圧縮率を2倍以上に高めたほか,64kbpsのビット・レートで,128kbps並みの音質を実現するところに特徴がある。

 これによりメモリに格納できるデジタル・オーディオの容量が2倍になる,またインターネット・ラジオの放送局にとってはCD並みの音質を保ちながら帯域幅を狭くできるなどのメリットがある。例えば,従来の音楽CDはディスク1枚につき平均15曲程度を保存しているが,mp3形式では150曲,mp3PRO形式では300曲以上が保存可能。

 mp3PROは,オーディオ・データを二つの部分に分けて符号化する。一つは既存のMP3との互換性を保つための部分,もう一つはmp3PRO独自部分である。こうすることでオーディオMP3形式のファイルおよびMP3を扱えるプレーヤとの互換性も確保しており,従来のMP3ファイルをmp3PROのプレーヤで再生することも可能にした。また逆にmp3PRO形式で圧縮されたファイルを従来のMP3プレーヤで再生することもできる。ただし,音質に関しては,mp3Proで符号化および復号化を行った場合が最も高くなる。

 なお,mp3PROに対応したソフトウエアやサービスなどについては,これまでのところ米MP3.comのコンテンツ,ドイツAhead SoftwareのCD書き込みソフトウエア「Nero」,米InterTrust Technologiesのデジタル著作権管理(DRM)プラットフォーム「Extensible Media Audio(XM Audio)Framework」がある。

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