「米ボーイングと異なり,既設の機器やシステムを使う低コストのブロードバンド・ソリューションを提供できる」。仏Airbus Industryと航空関連製造大手の仏Astrium,および航空・衛星通信技術を手がける米国の2社がオーストラリア時間9月11日に,飛行機向けの衛星インターネット接続サービスおよびTV放送などの提供で連携することを明らかにした。

 米国2社は,航空機向け通信技術を手がける米ARINCと,機内向けインターネット技術の米Tenzing Communications。ARINC社は世界の航空会社100社以上に衛星通信システムを提供している。一方のTenzing社は機内での電子メール技術を商用化しているベンダーである。Airbus社と資本提携関係にあり,Airbus社がTenzing社の株式30%を保有している。

 ARINC社,Astrium社,Tenzing社の3社は同日,オーストラリアのブリスベンで開催中の航空機向け通信/エンタテインメント製品見本市「World Airline Entertainment Association」で機内インターネット技術の公開デモを行った。

 Tenzing社は機内向けインターネット・サービスを提供する。ARINC社は航空会社向けの高速通信技術を提供する。同社は航空機向け高速通信市場で60%のシェアを持つという。Astrium社は衛星通信ネットワーク技術を提供する。Airbus社は航空会社向けに様々な広帯域サービスを提供する。同社は「Airbus In Flight Information Services(AFIS)」と呼ぶ情報化戦略を掲げており,3社との提携は同戦略の一環となるもの。

 なおAirbus社のライバル米Boeingもすでに,同様の機内広帯域ネット接続サービスの合弁企業を立ち上げている。米国大手航空会社3社,米American Airlines,米Delta Air Lines,米United Airlinesと提携し,2001年6月に「Connexion」社を設立した。

 「競合企業が提供するサービスと違い,我々のサービスでは,多くの航空会社がすでに搭載・利用している技術をベースとしながら,広帯域ソリューションを提供する」(4社)としている。インターネット版ウォールストリート・ジャーナルによれば,「Connexion社が提供するサービスでは高価な機器が必要。利用料金は1時間当たり15ドル以上となる見込み」という。一方のAirbus社などが提供するサービスでは,既設の地上基地局,衛星システム,機載アンテナおよび機内に設置の機器などを使い,コストを大幅に抑えるという。

 Tenzing社はAir Canada, Cathay Pacific Airways, FinnAir, Singapore Airlines, Varig,Virgin Atlanticの航空6社と提携しており,広帯域サービスを試験的な導入を始めている。4社は2002年末までに500機への組み込みを行う計画である。なお,Connexion社でもサービス第1弾の導入を2002年後半としている。Connexion社は1500機への導入を予定する。

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