(2001.5.25,Cheryl Rosen=InformationWeek

 独占禁止法監視団体や消費者団体など25団体の代表団が司法省に,旅行関連サイト「Orbitz」に対して営業禁止命令を下すことを求めている。

 同サイトは米United Airline, 米Delta Air Lines, 米Northwest Airlines,米Continental Airlines,米American Airlineの航空大手5社による合弁企業米Orbitsが運営する販売サイト。現在予約受け付けの段階で,6月に正式オープンする。ドイツのLufthansa German Airlines,オランダのKLM Royal Dutch Airlines,全日本空輸,大韓航空,シンガポール航空など欧州や南米,アジアの航空会社も提携企業として参加している

 代表団は,Orbitz社が売り上げに応じて報酬を支払うインセンティブ制度を取り入れているため,「航空会社が米Travelocity(米Sabre傘下)や米Expedia.com(米Microsoft傘下)など他の競合サイトに提供する料金と比べ,Orbits社への料金を割安に設定する可能性が高い」と主張している。

 代表団は,米運輸省がOrbits社の販売サイトに関し,「近視眼的で,公正な競争を妨げる可能性が高い」と判断したことを挙げて,次のように抗議している。

 「ある産業のすべての企業が集まって合弁のオンライン販売会社を立ち上げる。その販売会社が独占的な取引契約などに関する情報を公開しないような状況であったとしても,連邦政府が特に関与することはない---。Orbits社の営業を許すことは,連邦政府がこうしたメッセージを出すことと同じだ」。

 同代表団は指摘しなかったが,別の問題もある。Orbitsサイトのサービスでは当然ながら親会社や提携会社など「身内」の航空券だけをリストの目立つところにまとめて表示し,それ以外の企業の航空券はリストの下部に掲載することになるだろう。

 ホテルのケースでは,「ネット・ユーザーの80%は,多くのホテル・リストが提供されても,最初に表示されたホテル群のみをチェック,その中から一つを選択する。わざわざリストの下部までスクロールしたり,次ページをチェックしない」(ホテル関連のオンライン事業の業界団体Hotel Electronic Distrobution Network Association報告)という。「リストの一番上もしくは2番目に掲載されているホテルを選択する」という人が全体の50%に達する。

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【ITProによる注】

 Orbitz社は4月9日(米国時間)に,独占禁止法団体American Antitrust Institute(AAI)の警告に対し,「運輸省監査官のKen Mead氏は上院商業委員会(Senate Commerce Committee)で,『Orbitz社が協調的寡占行為を行う可能性は極めて低い。同サービスにより消費者は広範にわたる情報やオプションを無償で利用でき,メリットを享受できる』と証言している」との反論を発表している。この直後の4月13日に,米運輸省はOrbitz社に正式に営業を認める通達を出した。

 なお記事中の抗議のコメント部分に,「ある産業のすべての企業が集まって・・・も政府は関与せず,ということになる」とあるが,Orbit社のサービスに関しては,米航空業界で「一人勝ち」の状態が続いている米SouthWest AirlineがOrbitz社と係争状態にある。

 SouthWest社は5月はじめに,「Orbitz社が当社の航空料金やフライト・スケジュールなどについて,顧客に誤解を与える情報を提供している」として,Orbitz社をカリフォルニア州セントラル地区の連邦地裁に提訴した。

 これに対しOrbitz社は,「(提携企業でないとはいえ)公に提供されている料金情報やフライト情報なのだから,掲載に問題はない。公に利用可能な情報をSouthWest社に何の宣伝手数料も課すことなく無料で広く消費者に対し提供しているのに,それを拒むとはとても理解しがたい」と反論している。

 オンライン旅行サービス市場へのOrbitz社の参入に対しては,見方は二つに分かれている。

 米Jupiter Media Metrixは,「オンライン旅行代理店を脅かす航空会社サイト」との調査報告を発表している。

 一方で米CNBCは5月25日に,「Expedia社やTravelocity社にとってOrbitz社の参入は確かに脅威となるものだが,ここへきてダメージはそれほど大きくならないとの見方が強くなってきている。アナリストらによれば,現時点でのOrbitzサイト(ベータ版)は多数のオプションを提供しているとはいえ,複雑すぎて使いにくい」と報じている。

 なお米eMarketerの予測分析によれば,「米国のオンライン旅行市場は急成長,2003年には252億ドル規模に拡大する」という。

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