IoT(Internet of Things / モノのインターネット)という言葉が世間をにぎわせている。このIoTは、1999年にケビン・アシュトン(Kevin Ashton)が使い始めた言葉とされるが、従来のユビキタス社会がさらに一歩進んで、さまざまなものがインターネットに直接、もしくは情報機器やネットワークなどをとおしてつながることを意味している。その概念は、従来の情報機器を介したコミュニケーションよりはるかに拡大し、靴や洋服など身に着けるものから橋梁や信号など公共的に利用されるものまで、IoTデバイスの幅は広い。昨今は、IoTでつながるためのデバイス管理や個々のデバイスプロトコルの互換性、セキュリティレベルなどについての議論が盛んだが、今回はそれらIoTをUX、すなわち経験による価値を本当に生み出すのか? という観点で考えてみたい。
総務省もIoTの大きな伸びを予測
総務省の「平成27年版情報通信白書」でIoTについて述べられている。インターネットにつながっているハードウェアといえばPCやスマートフォンなどの通信機器がすぐ思いつくが、実は家電品やエネルギーなど産業分野の各種デバイスも、インターネットを経由してさまざまな情報をすでに受発信している。このIoTの数だが、2020年時点で530億個になるとの予測だ。2015年時点でさえ242億個あり、5年でほぼ2倍。各マーケティングアナリストもさまざまな数値を予測しているが、今後予定されている国家的イベントやAI(人工知能)の普及が拍車をかけ、その予測数値はさらに膨らむだろう。
白書を見る限り、自動車や医療はIoT普及の初期段階だが、今後はこれらの分野でも、組み込まれた多くのデバイスがインターネットにつながるだろう。またすでに産業や家電などのコンシューマー分野ではIoTデバイスは合わせて100億個以上となっており、特に産業分野では年率でも20%以上の伸びが予測されている。また、最も大きな伸びが予測されているのは自動車分野で、自動運転の普及をにらみ、IoTデバイスで重装備された自動車が登場する日も近い。道路側のIoTやビッグデータ技術もますます進むだろう。