前回、前々回とエンジニアリングの話に偏った感があるので、今回はUX(顧客経験価値向上)の原点に立ち戻り、その活動に注力してきたスタート地点を探ってみた。やはり、基本は人財育成をバックグラウンドとしたマインドセット(本人の経験や教育、時代の空気などを背景にしたものの見方や考え方)のリセット、すなわち意識転換だったのではないかと思う。猛烈なスピードでエンジニアリングは進歩し、一方でエンジニアリングのみではイノベーションが起きにくいというジレンマも出てきている。私自身も勝手に「テリトリーミックス(分野混合)」といった新語を発信し、協創や共創、そしてそれらをベースにした新たな意識変化による競争(コンペティション)が、今生まれようとしている点を取り上げてきた。そこで、企業文化の転換点として、また企業や社会が生まれ変わる代名詞として使われているワークスタイル変革について今回は考えてみた。

「新たな概念のサービス」の時代

 私が考えるUXは、やはり提案力、商品力(これからはサービス力)、そして品質なのだと思う。確かにオムニチャネル化した購買形態では、想定できないタッチポイントがさまざまなステップで生まれている。特に今後は、どのような商品であれサービスであれ、それらを一体化した「新たな概念のサービス」の時代となるため、継続的なお客さまとの関係が構築できなければビジネスの成功はない。サービスの話に触れるお客さまに対し、一般的に提案力は営業の力と考えられているが、この新たなサービスの時代では、営業でも設計でも研究でも品質保証でも、さらに総務や法務、コーポレート部門などでも、ありとあらゆる部門が提案力を求められるし、社内外を問わずサービス力も、そのサービス品質の高さも求められる。それぞれの部門が単に自分たちの分掌をこなしているだけでは、新たなサービスの時代には対応できない。

 ではなぜ、新たなサービスの時代になったのか? 以下のステップが進行中だからだ。

  1. 持たない経営、持たない社会の到来によるクラウド化、所有から利用への変化
  2. データトラフィック量が増えてビッグデータがクラウドに蓄積され、その処理ソフトも登場
  3. センサー社会の到来で、世の中の動きもつぶさに、しかも世界的規模で把握が可能に
  4. 数値データに加え、その意味データ解析まで可能となった結果、AI(人工知能)の進化をサポート
  5. AIやロボットでできることとできないこととの峻(しゅん)別が進み、人ができる作業においては創造性が必須に(この点はもう少し時間が必要である)

 この新たなサービス社会の到来で、私たちは何をすべきなのか。明確に言えることは「ワークスタイルを変革しなくてはならない!」ということだ。当社のワークスタイル変革のコンセプトにもなっているが、「時間」と「空間」の変革、それらの掛け合わせで生まれる「心」の変革により、成長を続ける企業をめざすことが今後の課題だ。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。