動画=テレビの時代

 私が日立製作所に入社した30年以上前には、動画が映るテレビが既に生活の中に溶け込んでおり、そのデザインはバラエティに富んでいた。家具様式のものから小型のマイクロテレビまで、まさに多種多様で、デザイナーも市場ニーズを徹底的に探り、素材や色彩からユーザーインターフェイスまで、多角的にデザインに取り組んでいた。そこから映し出されるコンテンツは基本的には放送局から発信されるもので、映像が動くことにワクワクしながらも、私たちメーカー側と放送局側は全くの別世界だった。

ホームムービーの登場

 その後家庭用のカメラが普及し、ホームムービーが当たり前のようになり、テレビ放送の動画とともに手作りムービーも、お茶の間の一主役に躍り出た。私自身も子供が小さかった頃は、動画を本当にたくさん撮影したものである。特に子供が生まれてから小学校に上がる頃までは、一時米国に駐在していたということもあったが、編集までは手が届かなかったものの、動画がとても身近にあった。

液晶大画面テレビが家庭の主役

 さて、それから一足飛びに話を現在に移すが、家電量販店のテレビ売り場の景色が一変した。40インチクラスのテレビが中心サイズのような印象で、50インチ、60インチが珍しくもなく、平然と売り場に並んでいる。そのサイズもさることながら、私がデザインしていた当時と決定的に違うのは奥行きだ。当時も液晶パネルは有ったが、大型サイズにするには多くの技術的な課題があった。しかし今は壁いっぱいに広がる大きさが実現されている。私のテレビデザイナー当時は、ブラウン管が収まるバックカバーまで含む全方位デザインで楽しんでいたが、技術進化によるテレビ画面のフラット化はデザインしろを狭くした。

 テレビに映し出される動画コンテンツは、今後どうなって行くのだろうか。従来のハイビジョン画質が、横方向で素子が1920ピクセルのためほぼ2000ということで、2K。それに対して倍のピクセルを持つテレビを4K画質として、多くの国内メーカーはそれを売りにしてきているが、いずれ高画質化は進むとしても、コンテンツ提供側や放送局側の準備には、もう少し時間が必要な気がする。

真のインターネットテレビの登場

 インターネット側は、個別進化が進むため、その準備は急速に進むことも考えられる。現実に4Kビデオカメラが、20万円を切る価格で市場に出回り始め、画質は放送用カメラと同レベルまで来ているとのコメントも見かけた。ネット上の配信では単にネットワークのパイプの太さだけが課題だ。その意味で、テレビハードの準備はできつつあるために、これまではインターネットテレビにはネットアクセスに課題があったが、今後はそのなめらかな実現が秒読みの段階に入った。

 テレビのプロダクトデザインから社会人スタートした私にとって、テレビ好きなのはどうしても仕方なく、特に画像を取り巻く世界は気になって仕方が無い。家電量販店でも必ずテレビ売り場は覗くことにしている。現に、自宅でも日立以外に3社のテレビを見ていて、リモコンやGUI、ユーザーインターフェイス全般で各社の個性が出て、日々気づきも多い。

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