今回は、ペーパーメディアをとおしたUXが、どのような形でお客さまに伝わり、どのような価値を創造するか。昨今インターネットを経由した各種のメディアが登場し、その行き場を失いつつあるペーパーメディア。その未来はどこへ向かうのか。その存在が本来備えた特質は、今後も維持されるのか、形を変えて残存するのか、はたまた消えるのか。さまざまな視点から考えて見た。

文字の黎明

 エジプトのヒエログリフ(聖刻文字)が生まれたのが、紀元前3000年以上前、その後ペーパーの語源ともなっているパピルスに、人は文字を書き記すようになり、これがヒエラティック(神官文字)と呼ばれ、圧倒的にコミュニケーションの幅や技術の継承が楽になった。その後、グーテンベルクの活版印刷技術が生まれ、ルネッサンス期以降、コピーは世界中を駆け巡ることになる。急速に言葉の伝わる速さや精度も向上し、読み物としての価値は高まった。また宗教や思想などの浸透も極めて容易になった。話し言葉は、眼前の群衆を魅了するが、書物はその伝播が浅いながらも、広がりは無限と言える。

ペーパーメディアの起源

 印刷物がペーパーメディアとして花開いたのは18世紀ヨーロッパの地方新聞だと言われている。19世紀には大衆化し、日刊新聞はメディアとしての地位を築き、週刊誌や月刊誌などペーパーメディアの幅も物量も莫大となりながら成長を続けた。しかし、2008年12月には、新聞100紙以上、テレビ局20局以上持つトリビューン社が、米国の若者の新聞離れを受けて経営破たんした。これはペーパーメディアの終わりの始まりだったのかもしれない。

トリプルメディアと企業のコミュニケーションツール

 さて、企業の持つ各種メディアに話を戻すが、企業はどのようなメディアを、企業とお客さまをつなぐツールとして活用しているのだろうか。昨今は「トリプルメディア、トリプルスクリーン」として広告や企業ブランディング観点から議論されている。(社団法人日本アドバタイザーズ協会より)トリプルスクリーンとは、「スマホを含む携帯」「端末を含むパソコン」「家庭の大型テレビ」の3ジャンルを指す。

では、トリプルメディアとは:

 一方でそのメディアの媒体としては、以下がある。 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌(4大マスメディア)、そしてプラットフォームとしてのインターネットなど。

では、それらの分類をベースとして、企業内にはどのようなお客さまとのコミュニケーションツールが存在するのか。

(1) ペーパー:カタログ、チラシ、パンフレット、情報誌、事例集、会社案内など
(2) 新聞/雑誌:取材記事、記事広告など
(3) TV/ラジオ:スポンサー番組、宣伝CMなど
(4) インターネット:企業情報、商品情報、事例、コラム、レポート、各種案内など
(5) YouTubeなど動画:コンセプト、商品紹介、事例、広告など

 インターネットが登場する以前は、上記(1)~(3)のおのおのが独立個別に、商品やサービスのプロモーションを展開していた。これらは人々の購買欲を掻き立てるルートであり、多くの商品は上記の(1)~(3)のいずれかを経由して、お客さまにリーチし、商品やサービスの購入を促していた。 インターネットが登場した1995年以降も最近までは、上記(4)までは概ねお客さまを購入に導くルートとして各種メディアは存在していた。若干状況変化があるとするなら、彼らが広告代理店経由で稼ぎまくり、金のなる木として謳歌していた広告メディアが、インターネットの登場以降、誰もが宣伝や広告を行えるようになり、コスト的にも1ケタも2ケタも下がったことぐらいだろう。

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