ダイキン工業化学事業部は2018年10月、米オラクルのマーケティングオートメーション(MA)ツール「Oracle Eloqua」と顧客管理(CRM)・営業支援(SFA)の「Oracle Sales Cloud」を採用し、グローバルのマーケティング・営業基盤を整備した。2016年にデジタルマーケティングのトライアルに乗り出し、成果を挙げながら社内にそのプレゼンスを上げていった同事業部の3年弱のステップと今後の展開を聞いた。
「『Webサイトをいじってなんになるの?』という声もあった2016年に、『(デジタルマーケティングで)ちょっとだけトライアルをさせてくれ』と経営層に訴えた」――。ダイキン工業化学事業部マーケティング部課長の寺田純平氏は当時の様子をこう振り返る。
同社化学事業部は2018年10月に、グローバルWebサイトを整備し、マーケティングと営業がデジタルで連携するプラットフォームを構築した。ここに至るまで、可能なところからデジタルマーケティングを実践し、社内にその有用性を証明していくというマーケティング部の戦略的な取り組みがあった。
「空調さん、何しに来たの?」
ダイキン工業の化学事業部が独自にデジタルマーケティングに取り組んだ大きな理由となったのは、フッ素化学事業の知名度の低さだった。
同事業の売り上げは全社売上高2兆2906億円(2018年3月期、以下同)の約8%に当たる1813億円という。同社の推定によるとフッ素化学市場でのグローバルシェアは第2位で、化学事業部は売り上げの75%を海外から挙げている。
それでも同社の売り上げの9割を挙げ、世界的なブランドを持つ空調事業に比べて知名度は低い。寺田氏自身も出張先の中国で「空調さん、何しに来たの?」と声をかけられるほどで、国内の展示会などで取ったアンケートでは「(ダイキン工業の化学事業を)全く知りませんでした」という声が多くあった。
フッ素化学市場は全世界で年平均約2%で伸びており、2020年は約8000億円の規模になるという。この市場でシェア1位を目指している同社だが、日本のAGC(旭硝子から社名変更)や米国のケマーズ(デュポンから独立)やハネウェル、仏アルケマ、ベルギーのソルベイといった競合企業も多く、近年は中国企業からの追い上げにも遭っている。
知名度が不足している現状のままでは、「お客様がフッ素化学で困ったときに、『ダイキン工業に聞いてみよう』と発想することを期待できない」(寺田氏)。この状況の改善を目指し、デジタルでのプレゼンスを上げることを目指した。