「潜在顧客のペルソナを定義した後、その顧客がどんな記事に関心を持ち、どんなコンテンツならダウンロードするかを逆算した」――。オリコミサービス メディア本部 デジタル&マーケティング部 チーフ・アカウント・ディレクターの鷹野寛之氏は、3年前に立ち上げた自社サイトを軌道に乗せた転機をこう振り返る。屋外看板や新聞折り込みといったアナログ広告媒体の潜在顧客をデジタルマーケティングで発掘した同社の取り組みを鷹野氏に聞いた。
米ハブスポットの「インバウンドマーケティング」を実践
オリコミサービスは、1922年に新聞折り込み広告を事業化したオリコミ(現オリコム)を母体とし、1973年に創業した。売り上げの9割は折り込み広告事業(折り込み事業)から得ており、残りを交通広告やWeb広告、屋外看板広告などが占める。
屋外看板広告事業(看板事業)を同社が立ち上げたのは、2016年7月のことだ。この事業の新規顧客獲得を目指し、屋外看板の物件がどこにあるかを探せるようにする「屋外看板サーチ」という専門サイトを立ち上げた。しかし当初のアクセス数は低く、「サイトを基点とした問い合わせもほとんどない状況が続いた」(鷹野氏)という。
この対策のため鷹野氏は、WebマーケティングやSEO(サーチエンジン最適化)について調査を重ね、自社にとって最適なツールを検討した。当初はサイトで提供するコンテンツの増量策や、広告などでの露出によるサイト訪問者の拡大策も検討したが、取り組みをスケールし続けることは難しいことが分かってきたという。
鷹野氏は「自分たちは、地道にコツコツやることが大事と考えた」と話す。小さく始めたサイトで潜在顧客を発掘して、それを成功体験として取り組みを拡大していく方針を打ち出した。
この考えに合致したツールとして浮上してきたのが、米ハブスポットのマーケティングプラットフォーム「HubSpot」だった。同社は「インバウンドマーケティング」と呼ぶ手法を提唱しており、その実践をサポートするフレームワークとツールを提供している。
インバウンドマーケティングとは、顧客と関係を築くために整備したWebサイトなどにコンテンツを掲載して、ここに顧客が自らアクセスするようひき付ける手法である。広告などで顧客を呼び込む「アウトバウンドマーケティング」とは全く逆の考え方である。