「営業チームの4分の1がリード(見込み客情報)を使うようになり、リードを活用するチームの商談化率が2倍に当たる60%になりました」――。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)第二営業本部 営業推進部門 マーケット戦略担当 担当部長の前田哲彦氏は、ターゲットとしたい企業群をあらかじめ設定してアプローチする手法である「ABM(アカウントベースドマーケティング)」の状況についてこう話す。
10億円規模の大口商談も生まれる
NTTコムの第二営業本部は、「ミドルアカウント」と呼ぶ中規模の企業群を対象に、ABM手法によるマーケティング施策を2年前に本格化させた。マーケット戦略担当が対象企業の絞り込みから購入意欲の醸成(ナーチャリング)までの過程で創出したリードを、支店を含む40チーム、約300人がいる営業担当に渡していく。
この取り組みは第二営業本部内にとどまらず、社内の他部門と連携している。システム部や製品開発、コンサルティング部門などと情報を共有し、活動結果を経営会議に報告している。
同社は2012年5月からオウンドメディアの「Bizコンパス」を運営してきた。2016年にはマーケティングオートメーション(MA)の「Oracle Eloqua」を導入し、同時にインサイドセールスを強化。顧客行動を基にリードを創出する体制を整えた。
しかし作ったリードは当初、営業に使ってもらえなかった。「『ターゲットとしたい企業ではない』『タイミングが合わない』といった指摘を受けました」(前田氏)。
そのため2017年度から、営業戦略を加味したリード創出に着手した。具体的には(1)営業部門との、優先してアプローチしたい企業や部門、アプローチ戦略のすり合わせ、(2)営業戦略と顧客行動に基づいたスコアリング――などである(図1)。並行して営業担当には、毎月のミーティングやキックオフの場でABMの狙いや効果を繰り返し訴えていった。