米アドビ システムズは2018年3月下旬に開催した年次カンファレンス「Adobe Summit 2018」の基調講演で、同社のプラットフォーム「Adobe Cloud Platform」の強化ポイントについて解説した。アドビのエグゼクティブバイスプレジデント デジタルエクスペリエンス担当ゼネラルマネージャーであるブラッド・レンチャー氏は、次世代の顧客体験(Customer Experience)を提供する要件の一つとして、100ミリ秒以下のレスポンスでパーソナライズする「ハイパーパーソナライゼーション」を取り上げた。
レンチャー氏は壇上で、CRM(顧客関係管理システム)など既存のアーキテクチャーはその要件を満たすものでなく、カスタマージャーニーが始まる瞬間を捉えることすら難しいと指摘。顧客体験の向上を図るアプリケーションを複数持つアドビは、企業がハイパーパーソナライゼーションを実現できるようにAdobe Cloud Platformの機能強化を進めてきた(写真1)。
Experience System of Recordの必要性
レンチャー氏はAdobe Cloud Platformを「顧客体験を重視する企業のためのプラットフォーム」と紹介した。米調査会社Forresterが実施した調査の中間結果によると、顧客体験に焦点を当てたデジタル変革を成功させた企業は、売り上げが従来比80%以上向上し、従業員満足度と顧客満足度に相関が見られたという。
とはいえ、ほとんどの企業は顧客体験を変革する途上にある。店舗やWeb、モバイルアプリなど顧客接点の複雑性が増し、リアルタイムでチグハグにならない体験を提供することの難しさに苦しんでいる。
レンチャー氏は、「企業がハイパーパーソナライゼーションを実現するには、技術基盤のモダナイゼーションが必要になる」と訴えた。その実現は既存システムの維持だけでは難しく、体験提供に特化した「Experience System of Record(SoR)」が必要になるという。
SoRは『キャズム』で知られるジェフリー・ムーア氏が提唱した考え方であり、ERPやCRMシステムなどビジネスで発生する事象の蓄積を得意とする。顧客との関係構築を得意とするSystem of Engagement(SoE)と顧客データを扱う点では同じだが、SoRはリアルタイム処理を必須要件とはしていなかった。