米オラクルは、2019年3月19日から21日まで米ラスベガスで開催した「Oracle Modern Customer Experience 2019」で、「セールスサイエンス」と呼ぶ企業の営業改革を支援する戦略を打ち出した。営業現場に「データドリブン」手法を取り入れることで、“勘と経験と度胸”から脱しつつ、AI(人工知能)で「隠れた優良顧客を自動的に発掘できる」レベルまで確度を高めようとするものだ。
データの量ではなく品質が問題
「『企業情報の質が悪いこと』と『(営業担当者)一人ひとりが手作業で調査しなくてはならないこと』が営業現場のペインポイントとなっている」――。イベントでセールスサイエンスの説明役を務めたオラクルのバスティアーン・ジャンマート氏はこう話した。
ジャンマート氏は2018年10月にオラクルが買収したDataFoxの創設者兼CEOで、現在はオラクルでAI Apps(Adaptive Intelligent Apps)の製品管理担当バイスプレジデントを務める。DataFoxは営業現場の課題解決を図るAIエンジンを開発し、BtoB向けの企業データセットを提供してきた。
DataFoxが実施した調査結果によると、「CRM(顧客関係管理システム)で使う企業情報の52%が問題を抱えていた」(ジャンマート氏)という。そのうちの29%はデータ量が不十分で、23%はデータが重複していた。
背景には、(1)公開企業に比べて非公開企業は情報が不足していることや、(2)世界中で毎日のように、新会社が生まれる一方で会社の統廃合や廃業があり、情報がすぐに陳腐化してしまうことがある。
ターゲットになる企業情報の収集は、マーケティング活動や営業活動を進める上での大前提であり、顧客を深く理解するために欠かせない。それなのにデータの質が悪く誤っているようでは、顧客からの受注はおろかターゲティングすら難しい。
しかも担当者ごとに調査をしているようでは、組織的に大きな時間損失につながる。ジャンマート氏は「このペインポイントはAIで解決すべきものだ」と考えた。
オラクルが今回のイベントで強調したセールスサイエンスは、顧客に関わるデータを実践的なビジネス上の知見へと変換し、営業現場が収益を上げられるようにリアルタイムに提供する仕組みといえる。顧客が製品やサービスの情報を収集し、絞り込みを終えてから接触するよう変化している中、AIを使って営業現場のプロセスを変更するよう企業に提案するものだ。