2018年1月、SAPはアレックス・アッツベルガー氏をSAP Hybrisのプレジデントに任命した。それまでSAP Aribaのプレジデントであった同氏は、SAPのCEO(最高経営責任者)であるビル・マクダーモット氏の腹心の部下として、過去3年間でSAP Aribaの事業規模を3倍に成長させた実績を持つ。
SAPで成長事業のリーダーを歴任してきたアッツベルガー氏は、今後のIT市場構造を変えるCustomer Experience(顧客体験、以降CX)の分野でどんなビジョンを持ち、日本企業を支援していくのか。就任から2カ月で来日した同氏に話を聞いた。
CXで重要な要素はデータ、オムニチャネル、バックオフィスとの連携
アッツベルガー氏がまず指摘したのは、「変革は消費者から始まっている」という点だ。最近は顧客企業との議論のテーマは、「変化した消費者にどうやって新しい体験を提供していくか」に集中しているという。
家電メーカーのエレクトロラックス(Electrolux)や小売大手のカルフール(Carrefour)など、大企業のCEOたちはCXの実現のために必要なテクノロジーへの投資に意欲を示している。2017年5月にGartnerが公開した調査結果によると、「89%の企業は、CXが競争戦略の鍵を握る」と考えているという。
となるとこれからは、業種やB2B/B2Cの垣根を越えて、ビジネスの対象と継続的な関係をどう築くかが重要になる。変革に企業が取り組むには、「顧客行動の文脈を理解するための、信用できるデータ」「オフラインとオンラインの連携」「フロントオフィスとサプライチェーンの調和」を重視するべきだという(図1)。