現時点でも、見込み客を育成するナーチャリングという発想でマーケティング活動を実施している企業はある。SFAツール(営業進捗管理システム)を活用し、顧客がコンタクトしてからの動向をトラッキングしている企業もあるし、Webサイトにユーザの行動プロセスに応じたコンテンツを用意して商品情報へ誘導するといった施策に取り組んでいる企業もある。

 しかし、このような企業であってもリードナーチャリングが機能していないケースが多く見られる。そして、それらの企業には共通したリードナーチャリングの阻害要因が存在する。ナーチャリングのターゲットが、潜在顧客か顕在顧客であるかによって阻害要因が大別されるため、それぞれのターゲット別に詳細を述べていくことにする。潜在顧客とは企業側から見て、氏名や連絡先などが把握できていない顧客であり、顕在顧客とはそれが分かっている顧客である。

潜在顧客へのアプローチフェーズにおける阻害要因(その1)

―「縦割り組織による弊害とWebガバナンスの未整備」
 潜在顧客とのコミュニケーションにあたっては、相手の顔が見えていない(氏名や連絡先が分からない)ことから、売り手である企業側から直接コンタクトすることはできない。従って、もっぱらWebサイトが主要なコミュニケーションフィールドになる。Webサイトには、顔の見えないユーザの来訪目的を想定して様々なコンテンツを用意しておく必要がある。それらのコンテンツはCIを統一し、ユーザビリティを確保した状態で提供する必要がある。商品や企業名を意識していないユーザに対しては、ブランドイメージを植え付ける必要があることからCIに一貫性が必要であり、継続的なアクセスを期待するためにはユーザビリティが確保された使い勝手のよいWebサイトでなければならないためである。

 ただし、企業規模が大きくなると、Webサイトに掲載されるコンテンツの管理は各部門に移管されることが多いため、統一化を図ることが困難になってくる。リクルート系の情報は人事部、IR・財務に関する情報は広報部、商品やサービスの情報は営業部といった分業体制でコンテンツを管理・運営すること自体は問題ないが、統括・チェックする部門がなければ部門毎にバラバラなWebサイトになってしまう。統治機構がないWebサイトでは、広報部が定めたCIが守られず、商品ページ毎に違った会社ロゴを使用したり、営業部が一押し商品を展開するために、既存のレイアウトを無視したフルFlashのキャンペーンページを立ち上げたりといったことが行われることがある。一つひとつは微々たることのように見えるが、これが積み重なるとコーポレートサイトとしての統一感が失われ、ブランド力やユーザビリティが低下していく。

 特に、コンテンツの管理費用を各部門の予算から捻出している場合、この傾向がより顕著になる。確かに、「あなたの部門で立ち上げたコンテンツは、問題があるので修正して下さい。ただし、費用はあなたの部門で負担して下さい」と言われても、コンセンサスが得られるわけがない。

 このような問題を回避するためには、分業の名の下にコンテンツ管理を各部門に丸投げすることは避け、全社的にWebサイトを統治する“Webガバナンス”を整備する必要がある。Webサイトの統治と言っても、各部門でコンテンツを作成することを否定するものではない。むしろ、コンテンツはそれぞれの専門部署で作成・更新することが望ましい。ただし、それらを自由勝手に任せるのではなく、ガイドラインに添った運用を順守し、最終的にリリースする前に広報部など統括・管理する部門が公開の可否をチェックするという仕組みが必要になる。Webガバナンスの整備により、CIとユーザビリティを確保したWebサイトを構築・運営することが可能となる。

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 Webガバナンスにより、リードナーチャリングを進めるための土台ができたことになるが、これだけではまだ足りない。ユーザの行動プロセスに応じたコンテンツを用意すると共に、それを生かしたマーケティング活動が不可欠である。ただ、コンテンツ管理を各部門に任せている企業が多いことからも分かる通り、各マーケティング活動についても部門毎で独自に実施している企業が多い。

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