調査内容 2008年第3四半期IT予算の分野別前年同期比増減率
調査時期 2008年9月中旬
調査対象 ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者
有効回答 3158件(1196件)
( )内は情報システム担当者の有効回答数


 日経マーケット・アクセスが企業の情報システム担当者を対象に行った2008年9月調査で,2008年7月~9月四半期のIT予算の前年同期比増減率を,適用業務やITインフラの分野,ハード/ソフト別などに細分して聞いた。前回の2008年6月調査(2008年4月~6月期)では,前年同期比マイナスの分野が過半数を占めたが,今回も設定した20分野(「その他」分野を除く)のうち17分野が前年同期比増減率の平均値がマイナス。特に業務アプリ系では半数の4分野が10%以上のマイナスとなった。

 2007年9月調査(2007年7月~9月期)での20分野全て前年同期比マイナスという状態を底として,2007年12月調査(2007年10月~12月期)と2008年3月調査(2008年1月~3月期)では大半の分野が前年同期比プラスと好転していた。しかしこの2007年度末をピークに,四半期のIT予算の前年同期比増減率は再びマイナスの方向に転じている。

生産・物流・顧客対応のシステム投資にブレーキ

 適用業務8分野(その他の適用業務分野を除く)の前年同期比増減率は,前回2008年6月調査では「生産管理」が+12.1%,「SFA・営業系」が+8.6%と突出し,4分野が3%以内の微減,「物流系」が-7.3%,「経営戦略系」が-4.1%と大きく分かれていた。それが今回は「会計系」だけが0.8%のプラスで,残り7分野はマイナス。特に前回8分野中最大のプラスだった「生産管理」が,今回は-17.6%と約30ポイントもの大幅な転落となった。そのほか「物流」「CRM・顧客関連」「SCM」の3分野も2ケタのマイナス。総じて見ると会計や経営,人事などコスト削減や統制関連のIT投資が底固いのに対し,ものづくりやロジスティックなど,現場業務の生産性向上につながる戦略的なシステムへの投資にはブレーキがかかったようだ。

 システム・インフラ7分野(その他のインフラ分野を除く)は前回2008年6月調査で「アプリケーション(システム)間連携基盤系」だけが前年同期比微増,他の6分野は約2~9%のマイナスだった。今回も全分野が1桁のマイナスで前回と似た結果である。「セキュリティー」の前年同期比-0.7%が最も高く,「インターネット系」の同-8.4%が最低。「ストレージ系」(前回-8.8%→今回-3.6%)が約5ポイント好転,「ネットワーク系」(前回-2.3%→今回-8.1%)が約6ポイントの下落を示したのが目立つ。

 「新規システム開発」は前々回2008年3月調査で前年同期比+3.7%,前回2008年6月調査でも+4.0%と比較的安定した成長率を維持していた。今回もやや低下したものの,-0.4%に踏みとどまっている。「既存システムの再構築」は前々回の+16.3%が前回+2.9%に急落したが,これも今回(+2.0%)はほぼ前回並みの水準を維持した。「運用・保守開発」は2007年12月調査で+7.0%,前々回2008年3月調査が+3.3%,前回6月調査で-2.8%とずるずる後退していたが,今回は+0.8%でやや押し戻した形。

 「ハード購入」「ソフト購入」は前々回2008年3月調査でともに約4%のプラスから,前回はソフトが-7.5%,ハードが-3.1%と大きく下がったが,今回はともにやや上昇して1%以内のマイナス。ほぼ前年同期並みの投資予算,という結果だった。

■調査概要
 日経マーケット・アクセスが,ITpro Researchモニターに登録している企業情報システム担当者のうち,予算執行・承認権限を持つ人を対象に,執行・承認の権限を持つシステム予算(四半期分)の総計の増減率を聞いた。
 新規購入や開発中の案件がなく、四半期のIT関連支出が継続運用費やリース料の支払い、減価償却費のみの場合、それらの本四半期分の総計額が属する範囲を選ぶよう求めた。外注の開発・運用要員の人件費は含めるが、自社内の開発・運用要員の人件費は含めない。
 本文中の「IT予算の前年同期比の平均」は,選択式回答(最も近いものを一つ選択)の「完全に削減」を-100%,「前年同期の50%未満にまで削減」を-75%,「50%以上80%未満にまで削減」を-35%,「80%以上90%未満」を-15%,「90%以上110%以内」を0%,「110%超120%以内」を+15%,「120%超150%以内」を+35%,「150%超200%以内」を+75%,「200%超」を+125%,「前年同期の予算はゼロ」を+200%に換算して加重平均した。
 分野別のITインフラ系のうち,「情報系システム」はグループウエアや情報共有システム,「ネットワーク系システム」はWAN,LAN,電話,「インターネット系システム」は情報発信,電子商取引,マーケティング関連のシステムを指すものとして回答を求めた。「運用・危機対策系システム」はビジネス・コンティニュイティー関連のシステムも含む。目的別のうち「運用・保守開発」は信頼性向上やコスト・ダウンのための開発を含む運用・保守,ハード/ソフト別での「ソフトウエア購入」の対象範囲はアプリケーションやミドルウエアを指す,と設問に記載している。
 なお,適用業務分野の「SFA・営業系」と「SCM」と「物流」の3分野は2007年6月調査(2007年4月~6月期),「会計」以外の適用業務分野の7分野とシステム・インフラ分野の「運用・危機対策系」は2007年3月調査(2007年1月~3月期)での回答数が30件未満のため,四半期予算増減率INDEXは参考値。2006年9月調査と2006年12月調査,2007年9月調査と2008年3月調査,2008年6月調査,今回の2008年9月調査では,「その他」以外での参考値扱いの分野はない。
 2006年9月調査(2006年7月~9月期)は「全社情報システム担当者」の回答のみだったのに対し,2006年12月調査(2006年10月~12月期)からは「部門/事業所/ワークグループ・レベルの情報システム担当者」の回答も含んでいる。
 調査実施時期は2008年9月中旬,調査全体の有効回答は3158件,「所属する企業・組織で自社の情報システムにかかわる業務(企画立案・設計・開発・運用・予算承認など)を担当している」とした実質的な有効回答は1196件。

図●最新四半期(2008年7月~9月)IT予算の分野別の前年同期比増減率
図●最新四半期(2008年7月~9月)IT予算の分野別の前年同期比増減率