企業会計基準の調査研究や開発を担当する財務会計基準機構(FASF)は2010年11月11日、第10回基準諮問会議を実施。IFRS(国際会計基準)と日本基準の差異を埋めるコンバージェンス(収れん)計画の変更や四半期財務諸表に関する会計基準(四半期会計基準)の改正など、会計基準の策定主体であるASBJ(企業会計基準委員会)が進めている活動について説明・議論した。

 基準諮問会議、ASBJはともにFASF内の組織。基準諮問会議はASBJに属する各委員会における審議や運営内容について検討する役割を担う。8月2日に実施した第9回会議では、金融庁から依頼のあった四半期会計基準の改正や、後発事象に関する会計基準の策定を審議し、ASBJに提言した。

 第10回会議では、第9回会議以降のASBJの活動を報告。9月16日に検討し、17日に公表したプロジェクト計画表に関して、主にIFRSの策定主体であるIASB(国際会計基準審議会)とFASB(米国財務会計基準審議会)による共同プロジェクトの遅れに起因する計画変更の状況を説明した(関連記事)。共同プロジェクトは収益認識、金融商品、リース、保険の4分野を優先する方針を打ち出し、2011年6月までに基準の最終化を完了する方向で作業を進めている。一方で、財務諸表の表示などは後回しにしている。

 今回の会議では企業側の委員から、「IASBとFASBのプロジェクト計画変更に、ASBJのコンバージェンス計画が引きずれているなか、IFRS強制適用(アドプション)の可否を判断する2012年が近付きつつある。どこまでコンバージェンスが完了した段階で、強制適用を判断するのか。プロジェクト計画表に『ここまで完了した段階で判断する』ことを示すといった方策が必要ではないか」という意見が出た。

 ASBJ側は「強制適用の可否を判断するのは金融庁であり、我々は判断材料を提供する側」と前置きしつつ、意見に対しては検討していくと語った。ASBJ委員長の西川郁生氏は「IASBとFASBの優先プロジェクトは2011年6月に完了する。この段階を一つの区切りと見てよいと個人的に考えている。これである程度判断できるのではないか」と話す。

 西川氏の意見に対し、別の企業側の委員から「財務諸表の表示のような重要な基準が決まっていないと、強制適用の判断は難しい。基準として安定性がなさすぎるのではないか。日本からも積極的に主張した方がいい」という意見も出た。

 委員からは、強制適用以降に関する問題提起もあった。「2012年にIFRSの強制適用が決まった後、コンバージェンスはどうするのか。作業を緩和していくのか、これまで通り推進していくのか。そろそろ将来展望を示すべきではないか」というものだ。こうした議論は、来年から基準諮問会議やASBJで本格化するとみられる。

 このほかASBJの四半期会計基準専門委員会の委員長を務める新井武広氏(ASBJ副委員長)が、四半期会計基準改正の状況を説明した。今回の改正は、2010年6月18日に閣議決定した「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ」の金融戦略で、「四半期報告の大幅簡素化」を打ち出したことに対応したもの。

 新井氏によれば、改正のポイントは(1)損益計算書で「累計情報」と「四半期情報」のどちらかだけにするか、(2)キャッシュフロー計算書を半期ごとの報告にするか(第1・第3四半期は免除するか)、(3)注記事項をどこまで入れるか(削除するか)の3点。2010年中に公開草案を出し、2011年3月までに基準の最終化を目指すとする。

 次回の基準諮問会議は2011年2月の開催を予定している。