アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部 シニア・マネジャー
荘所 智子

[Question10]
IFRS(国際会計基準)で収益(売り上げ)が変わるとよく耳にします。どのような点に注意すべきでしょうか?

 IFRSを導入すると「収益認識」が変わると、よく言われます。これは「売上高の計上時期と金額が変わる」ことを意味します。

 現在の日本基準では、収益の認識は実現主義によるとしています。実現主義とは、「財貨の移転または役務の提供の完了」とそれに対する「対価の成立」があったときに、収益を認識する考え方を指します。

 実は、この考え方自体はIFRSに近いものです。ところが日本基準には、収益認識に関する包括的な規定がありません。このため、商慣習や業界特有のルールに左右されているケースが多くあります。

 これに対し、IFRSでは収益認識を、日本基準に比べてあいまいな点が少なくなるように規定しています。製品やサービスの売上収益といった経済的便益の企業への流入、信頼性のある測定に基づいています。IFRSの導入により、収益認識が変わるとみられているのは、こうした違いがあるからです。

 変更点としては、「収益認識が出荷基準から納入/検収基準に変わる」という例がよく挙げられます。詳しくは、後で説明します。「キーワードで理解するIFRS:収益認識」も併せてご覧ください。

IAS第18号、IFRIC第13号、IAS第11号で規定

 IFRSで、一般的な収益認識について包括的に規定しているのは、IAS第18号「収益」です。これに、IFRIC第13号「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」とIAS第11号「工事契約」を加えたものが、事業によらない収益認識にかかわる基本的な規定となります。

 これに加えて、IAS第17号「リース」、IAS第39号「金融商品」のように、事業個別テーマの基準書および解釈指針が用意されています。全体としては図1のようになります。

図1●収益認識にかかわる基準書・解釈指針
図1●収益認識にかかわる基準書・解釈指針
[画像のクリックで拡大表示]

 ここでは各基準書および解釈指針の名称を略称で記載しています。正式な名称については、本連載の「Q2 IFRSは全体として、どのような体系?」を参照してください。