アクセンチュア IFRSチーム
テクノロジー コンサルティング本部
シニア・マネジャー
大野 純一

[Question1]
IFRSは「原則主義」だと聞きます。今の日本の会計基準とはどのように違うのでしょうか。

 IFRS(国際会計基準)と日本の会計基準の違いは何か。こうした質問に対し、よく挙がるのは「原則主義」です。このほかに「貸借対照表重視」「グローバル基準」も大きな違いと言えます(図1)。

図1●日本基準とIFRSの違い
図1●日本基準とIFRSの違い
作成:アクセンチュア
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 IFRSはグローバルの投資家をはじめとするステークホルダーの視点に立った財務情報の開示基準です、このことを念頭に置くと、これら三つの特徴を理解しやすくなります。

特徴1:原則(Principles)主義

 原則主義では、会計処理の判断のための数値基準といった具体的な判断基準や処理方法をあまり示しません。原則に従い、企業が自ら判断することになります。

 そのため、判断の補足説明として、財務諸表を開示する際に、より多くの注記が必要となります。

 原則主義の対極にあるのは規則主義(rules based)です。米国がその典型的な例で、日本もこれに近いと言えます。広範にわたり具体的な数値基準を示しており、会計処理の際には規則に従い、判断を下します(関連記事:キーワードで理解するIFRS [5]原則主義)。

特徴2:貸借対照表重視(Asset/Liability Approach)

 IFRSは、投資家や債権者が自らの意思決定のために必要とする情報を提供することを主な目的としています。そのため、将来キャッシュフローの現在価値を使って資産を評価します。

 つまり、固定資産の減損・再評価、売却可能な金融資産などを時価評価した上で、将来的にキャッシュフローを生み出せる資産状況にあるかどうかを投資家に正しく伝えようとしているのです。PL(損益計算書)よりもBS(貸借対照表)を重視することになるので、「BS重視(資産負債アプローチ)」と言えます。

 日本の会計基準は、「PL重視」(収益費用アプローチ)の考え方をとっています。日本の会計基準の基礎が固まった高度成長期には、右肩上がりの経済を前提としており、当期の期間損益だけで容易に将来予測が立てられたことに起因しています。

 財務諸表についてもPLを作成した後に、次期以降の収益・費用の源泉となる項目を補足的にBSとして計上する発想に立っています(関連記事:キーワードで理解するIFRS [8]BS重視)。