Windows Vistaが一般ユーザー向けに出荷開始されてから10カ月が過ぎた。米Microsoftは,Vistaは過去のどのWindowsよりも順調に売れており,2008会計年度第1四半期(2007年7~9月期)の決算でも「『Windows Vista』の需要が引き続き好調だった」としている(関連記事:Microsoftの7~9月期決算は27%増収で大幅増益,「引き続きVistaが好調」)。年末までに1億ユーザーを超えるとの試算もある(関連記事:Windows Vistaが年末までに1億ユーザーを突破へ)。

 だが,そうした勢いを実感できないと言う人も多いのではないだろうか。そこでこれまでにITproに掲載したVistaの評価に関する記事をざっとまとめてみた。

調査記事に見るVista

クライアントVistaの導入理由,5割が「旧版OSのサポート切れ」,3割が「セキュリティ対策の強化」をトップに挙げる
 2007年7月時点で自社のシステムにWindows Vistaクライアント機を導入済み,または情報システム部門でVistaを試験中,あるいは2009年3月末までにVistaクライアントを試験導入予定とした回答者に「Windows Vistaをクライアント機に導入する(あるいは導入を検討する)理由」を聞いたところ,最も多く「最大の理由」に挙げられたのは「クライアントOSの旧バージョンのサポート切れ」で,回答者の約5割がVistaの導入理由のトップに挙げた。

5000人に聞きました!自宅のVista導入率は…
 「自宅パソコンのWindows Vista導入率は14.2%」「いずれ導入したいという回答を含めて導入に前向きなユーザーは7割近いが,3年以内と具体的に考えているユーザーとなると2割に落ちる」。ITpro読者に対して7月26日から31日にかけて実施したアンケート調査から,このようなWindows Vistaに関する状況が明らかになった。

企業ユーザーの視点から見たVista

Windows Vistaの人気
 Windows Vistaは,マニア層の一部に評判が悪い。主な主張は「遅くて重い」「互換性が低い」というものだ。ところが,こうしたハードルにもかかわらず,Windows Vistaの導入を決めた企業は結構多い。これほど早く立ち上がったクライアントOSは,Windows 95以来ではないだろうか。

個人ユーザーの視点から見たVista

Vistaが「遅い」と感じませんか?
 Vistaはどうもハッピーな状況ではない。Vistaが好感を持たれない理由は,(1)価格が高い,(2)マイクロソフトの訴求するセールスポイントがユーザーの感覚とかけ離れている,(3) 2001年にWindows XPが出て約6年が経過する間にハードウエア,ソフトウエア,使いこなしノウハウの資産が各所に大量に蓄積されて移行コストが上がった,などが考えられる。ただ,最大の理由は,Vistaが「遅い」ことではないだろうか。

Vistaってどうよ?
 まず,率直な感想を言うと,筆者はVistaを割と気に入っている。今では日常作業の多くをVista上でこなすまでになっており,現在もこの原稿をVistaの上で書いている。どこが気に入っているかというと,やっぱり画面周りを中心とした操作性だ。とはいっても,雑誌やWebの記事で「Aero」の代表例として取り上げられる半透明の画面や,複数のウインドウを斜めに3D表示してクルグル回せるといった「フリップ3D」の画面ではない。

Vistaへはアップグレードよりも買い替えがベター?
 これからパソコンを買う人には,Windows Aeroが使えるHome PremiumかBusinessを搭載したVistaパソコンにしなさいと言うだろう。だが,Windows XPパソコンをVistaにアップグレードするかどうか迷っている人に対しては,話は違ってくる。あくまでも一個人の意見として結論を言ってしまうと,多くの場合,Vistaにアップグレードするくらいなら新しいパソコンに買い換えた方がいい。

Vistaの深層

Windows Vistaにエールを送る
 記者がWindows Vistaに期待しているのは,「デスクトップ・アプリケーションの復権」である。Windows Vistaがまだ開発コード名「Longhorn」と呼ばれていたころ,マイクロソフトが目指していたのは,「デスクトップ・アプリケーションの開発者に,極上のプラットフォームを提供する」ことであった。マイクロソフトの理想は間違っていなかったと思う。間違いがあったとすれば,その理想の実現に失敗して,新OSを6年の長きにわたってリリースできなかったことである。

現時点で判明した「Windows Vistaの欠点」を暴く
 Windows Vistaに関しては多くの約束がなされ,興奮が生み出された。しかし結局のところ,これらはすべて無駄だった。Microsoftは恥を知るべきだ。それは,Windows Vistaのプロジェクトが上手く行かなかったことに関してだけではない。MicrosoftがAppleをコピーするのは誰もが予期していたことである。AppleやLinuxも同じようにMicrosoft製品をコピーしているからだ。しかし,Mac OS X Tigerの焼き直し程度の製品を出すことを,人々に大げさに期待させるべきではない。Windows Vistaは期待外れだ。この真実をうまく取り繕って伝える方法はない。