写真1●はてなブックマークの画面。操作は,気に入ったページを表示してブックマークレットをクリックするだけと簡単。同じWebページをブックマークした人のページも閲覧できる。カレンダーを追加できるなどカスタマイズも可能
写真1●はてなブックマークの画面。操作は,気に入ったページを表示してブックマークレットをクリックするだけと簡単。同じWebページをブックマークした人のページも閲覧できる。カレンダーを追加できるなどカスタマイズも可能
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写真2●「RBOOKMARK」の画面。メモ書き機能で自由度高い。携帯端末からの利用も可能
写真2●「RBOOKMARK」の画面。メモ書き機能で自由度高い。携帯端末からの利用も可能
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写真3●テキストや画像をハイライトすればメモとして一緒に保存できる。Webブラウザ右下に組み込まれるミニ・ウインドウ「mini notebook」でもクリップ操作が可能。Google Notebookサイトへのジャンプや内容の編集もこのウインドウからできる
写真3●テキストや画像をハイライトすればメモとして一緒に保存できる。Webブラウザ右下に組み込まれるミニ・ウインドウ「mini notebook」でもクリップ操作が可能。Google Notebookサイトへのジャンプや内容の編集もこのウインドウからできる
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写真4●Google Notebookの画面。左側にいくつものフォルダ(ノートブック)を作成し,クリップ(ノート)を整理できる。フォルダ間の移動もドラッグ&ドロップでスムーズに行える
写真4●Google Notebookの画面。左側にいくつものフォルダ(ノートブック)を作成し,クリップ(ノート)を整理できる。フォルダ間の移動もドラッグ&ドロップでスムーズに行える
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 日々入ってくる山のような情報---読者のみなさんはどのように整理されているだろうか。

 筆者の場合,ニュースやブログ記事など,毎日大量にWebの情報を目にする。それらの中から重要なものをいかにうまく保存/整理できるかが仕事を効率化する鍵となっている。コピー&ペーストなどしてパソコン内にきちんと整理しておくのもよいが,時間がなくてそれもままならない。

 そんな中,最近はWebでこれらをうまく管理できるサービスが続々登場している。今回はそうした各社のサービスを検証してみたい。

リンクだけならソーシャル・ブックマークが便利

 まず,保存したいものがWebページのリンクだけならば,ソーシャル・ブックマーク・サービスが利用できる。

 海外で著名なものには,del.icio.usがある。日本では,はてなが運営する「はてなブックマーク」が有名だ(写真1)。最近ではニフティも「ニフティクリップ」と呼ぶサービス(ベータ版)を始めている(関連記事)。

 これは,一言でいえばネット上に自分用のリンク集ページを作成できるサービス。あらかじめ,「ブックマークレット」と呼ぶ,JavaScriptを動かすリンクをブラウザのお気に入りに登録しておき,気に入ったWebページを表示した状態でそのブックマークレットを選択する。すると,そのページのURLとタイトルが自分用のサイトに追加される。各ブックマークには,タグ(キーワード)やコメントなどが付けられる。あとでこれらキーワードを対象に検索することができる。

 しかしこれらのサービスは,その名 "ソーシャル" が示す通り,自分の気に入ったブックマークをみんなで共有しようというのが主な目的だ。自分のリンク集を公開することで,自分の興味とするところを人に示すことができる。自分と同じことに関心を持つ人や,目ざとい人のブックマークをチェックしていれば,新しくて有益な情報を素早く入手できる。そんなメリットがある。

 また運営会社にとっては,どこが人気サイトなのかといった情報を自動で収集できる。これを使ってランキング情報を提供するなどサービスの拡充を図れるし,マーケティング資源としても活用できる。

個人用ツールとして登場した新サービス

 こうしたサービスとは異なり,あくまでも個人用の情報ツールとして提供しているサービスもある。例えばサイドフィードの「あとで読む」やネットビレッジの「RBOOKMARK」(写真2)がある。

 前者は,メールを利用したサービス。ブラウザに登録したブックマークレットを使ってWebページを選択するという操作は同じなのだが,ページの内容を,あらかじめ登録しておいたメールアドレス宛てに送るといった点が異なる。メールで届くのは,画像も含めたWebページのキャッシュ。つまり内容はブックマークレットを選択した時点のWebページそのものとなる。ページの内容がその後更新されても,パソコン内にはオリジナルが残る。このことがメリットにもなる場合もあれば,そうでない場合もあるだろうが,それもこのサービスの特徴といえるかもしれない。

 この「あとで読む」は,自分のメールクライアント内で自由にフォルダを使って整理できる点で使い勝手がよい。いったん受信してしまえばオフラインの状態でも利用できる。その反面,異なるパソコンでは情報が見れないというデメリットもある。

 後者の「RBOOKMARK」は,ソーシャル・ブックマーク同様Webで閲覧するサービスだが,メモ書きの領域が広くとられている。記事の一部などをペーストして保存できるなど,メモ機能で自由度が高いのだ。テキストの量が増えるので検索対象となる情報量も増えて便利だ。また携帯端末からの利用も可能となっている。パソコンで情報をクリップしておき,移動中に携帯電話で見るといった使い方ができる。

 これらのサービスを使ってみて感じるのは,どれが自分に最も適しているのかを見極めて,サービスの数を増やさないようにするということだろうか。それぞれのサービスに専用のブックマークレットがあるので,ブラウザにいくつも登録しておくと混乱してくる。ちょうど財布の中にある無数のポイントカードのようで,いざ使おうというときに面倒なのだ。また検索作業をなるべく分散しないことも作業の効率アップにつながるだろう。

Googleの新サービス「Google Notebook」

 以上,主に国内各社のサービスを見てきたが,筆者が自分の仕事環境に最も適していると感じたのは米Googleの「Google Notebook」だ。

 これは,Webページからさまざなな情報を切り取ってオンラインのノートとしてに保存/整理できるサービス。実はこれ,同社が5月11日に同時発表した4つのサービスのうちの1つ(関連記事)。ほかのサービスとともに矢継ぎ早に発表されたので印象が薄かったのだが,使ってみてなかなか便利ということがわかった。

 筆者の場合は,原稿作成の資料や役立ちそうなアイディアのタネなどをクリップして,メモ書きしておくことが多いのだが,それらの作業はWebでもデスクトップ上でも煩雑になりがち。しかしGoogle Notebookの場合は,クリップが容易に保存でき,その情報量も多い。また編集や整理の自由度も高いのだ。

 例えば,気に入ったWebページを表示した状態で右クリックし,メニュー項目「Note this (Google Notebook)」を選択するとWebページのタイトルとURLをクリップ(ブックマーク)できる。

 またクリップする際にページのテキストや画像を選択(ハイライト)していれば,その部分をメモとして一緒に保存できる。画像,テキスト,テキストに張られているリンクもそのままの形で保存できるのだ。クリップした情報は,Google Notebookのサイトや,ブラウザ右下のミニ・ウインドウで編集できる(写真3)。

 クリップしたものは「ノート」と呼ばれ,Google Notebookのサイト上で並べ替えたり,フォルダ(「ノートブック」と言う)をいくつも作って整理できる(写真4)。また個々のノートは非公開/公開の設定ができる。検索も自分のノートブックだけを対象にしたり,公開されているほかのユーザーのものを対象にするといったことも可能(現在のところ日本語の検索文字列では検索がうまく動作しないようだが)。

 Google Notebookを使えば,その時々にかかわるプロジェクトやレポートの資料をどんどん溜め込んで1つのノートブックにまとめておける。プロジェクトが終われば,ノートブックを別名に変更してアーカイブ化すればよい。これでWebの情報がすっきり整理できるようになる。また,単に自分用のブックマークとしても利用できる。フォルダ機能があるので,ブックマークのカテゴリ分類ができて便利だ(注1)

注1:Google Notebookを利用するにはGoogleのアカウントと,WebブラウザにGoogle Notebookの機能拡張を組み込んでおく必要がある。サポートするブラウザは,IE 6とFirefox 1.5以降(Windows/Linux)。FirefoxはMacintosh版の機能拡張も用意しているが動作保証はしないとのことだ。ただ筆者のMac環境では今のところ問題なく動作している。またSafariとOperaについては将来的に対応するかもしれないとしている。

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 この原稿執筆中,Googleがまた新しいサービスを発表し,今,大きな話題になっている。米国時間6月6日に正式発表した表計算のWebアプリ「Google Spreadsheets」である(関連記事「Ajaxを駆使したWeb表計算「Google Spreadsheets」を日本語環境で試す」)。米メディアの報道を見ていると「Microsoftにとっての脅威がまた増した」といった論調が少なくない。

 このGoogle Spreadsheetsは,まだまだ開発段階で機能も少ない。とうていExcelにはかなわないし,同様のサービスはすでに他社が先行して提供しており目新しさはない。しかしGoogleが表計算分野に進出したことの意味は大きい(Windows IT Proの記事internetnews.comの記事)。

 同社はこれまで,メール,ワープロ(関連記事),カレンダー(関連記事),そしてノートブックとサービスを拡充してきた。今度は表計算というこれまで以上に強力なプロダクティビティ・ツールを持ってきた。

 対するMicrosoftは,Adobe SystemsとのPDF問題で「Office 2007」「Windows Vista」から重要な機能を削除する動き(関連記事)。一方,「Windows Live」や有料広告検索「adCenter」でGoogleの市場に進出しようとしている(関連記事)。両者の競合関係がますます顕在化してきたようである。

■著者紹介:小久保 重信(こくぼ しげのぶ)

ニューズフロント社長。1961年生まれ。98年よりBizTech, BizIT,IT Proの「USニュースフラッシュ」記事を執筆。2000年,有限会社ビットアークを共同設立し,「日経MAC」などに寄稿。2001年,株式会社ニューズフロントを設立。「ニュースの収集から記事執筆・編集など,IT専門記者・翻訳者の能力を生かした一貫した制作業務」を専門とする。共同著書に「ファイルメーカーPro 職人のTips 100」(日経BP社,2000年)がある。