ストレージは従来、「ハードディスクにデータを格納するための筐体」と位置付けられ、ディスクの性能/容量から見た費用対効果が主たる評価の指標となっていた。ディスクの性能と容量は、今後もストレージ活用における最も重要なポイントではあるが、昨今では新たに考慮すべき事柄も増えてきている。
データの保存手段としては、ハードディスクに加えて「フラッシュメモリー」が注目を集めている。クラウドの観点では「オンラインストレージサービス」の動向も見逃すことができない。「サーバー仮想化環境におけるバックアップ」においても、従来とは異なる留意点が存在する。
そこで今回は、今後のストレージ活用に大きな影響を与えると予想される以下の3つのポイントごとに、ユーザー企業を対象とした調査結果を交えながら考えていくことにする。
- フラッシュメモリー
- オンラインストレージサービス
- サーバー仮想化環境におけるバックアップ
フラッシュメモリー
フラッシュメモリーはこれまで、ストレージやサーバーに搭載するキャッシュとして利用されるケースがほとんどだった。だが大企業向けのストレージでは最近になって、フラッシュメモリーのみで構成された、いわゆる「オールフラッシュストレージ」も登場している。日本HPの「HP 3PAR StoreServe 7450」※1、デルの「Dell Compellentフラッシュ最適化ソリューション※2」、日立製作所の「Hitachi Unified Storage VM all flash」※3などがそうした例だ。
これらは単に従来のハードディスクをフラッシュメモリーに置き換えただけでなく、フラッシュメモリーの特性を意識したコントローラやソフトウェアを備えている。例えば、性能面や耐久性では有利だが価格が高い「SLC(Single Level Cell:1セルに1ビットを記録)」のフラッシュメモリーと、それとは逆の特性を持つMLC(Multi Level Cell:1セルに複数ビットを記録)のフラッシュメモリーを階層化する機能を備えるものもある。
また、フラッシュメモリーに書き込む場合には、既存のデータをいったん消去する必要がある。そのため書き込み時のキャッシュサイズが大きめの値で固定化されていると、小さなデータ書き込む際に本来必要のない領域でも「消去 ⇒ 書き込み」の処理が発生してしまう。そこでキャッシュからフラッシュメモリーに書き込まれるデータサイズを自動的に調節して、この問題による処理の発生を軽減する機能を備えたものものある。細かい話と思うかもしれないが、性能面だけでなくフラッシュメモリーの寿命を伸ばすという観点からも、こうした取り組みが重要となるのだ。