働き方改革や人材不足に対処するためには「より短い時間で、より多くの成果を出す」ことが求められる。そこで注目を集めているのが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による業務の自動化だ。

 だが、ユーザー企業を対象に実施した調査からは、RPAを導入するだけでは働き方改革や人材不足への対処として十分とは言えないことが分かってきた。それはなぜなのか。何が足りないのか。調査データを見ながら探っていくことにする。

RPAの市場は今後も伸びていく

 まず、RPAについて簡単におさらいしておこう。

 規模を問わず、ほとんどの企業が既に会計などの業務アプリケーションを導入している。しかし、「従業員から紙面で提出された領収書を総務や経理の担当者が手作業でシステムに入力している」「店舗や営業所から提出される月間売上データの書式が微妙に異なっており、本社の担当者が手作業で整形してまとめている」など、既存の業務アプリケーションではカバーできない作業は意外に多い。

 働き方改革によって残業時間が制限され、今後の人材不足も予想される中、企業としてはこうした「ヒトによる手作業」を効率化していく必要がある。そこで注目を集めているのが「RPA」だ。

 RPAも広義の意味では業務アプリケーションの一種と言えるが、ヒトによる手作業を記憶/定義することで自動的に再現できる点が特徴だ。これによって、従業員がこれまで行っていた繰り返しの手作業を自動化できるようになる。RPAが業務を自動化する仕組みについては、本連載の第79回 「用途数」で考える、適材適所のRPA戦略で説明した。

 以下のグラフは、年商500億円未満の企業を対象に「RPAの導入状況」と「RPAソフトウエアの導入費用」を尋ねた結果から算出した「RPAソフトウエア導入費用の市場規模」である。「導入済み(億円)」はRPAを導入済みの企業からの回答から算出した実績値、「導入予定(億円)」は今後RPAを導入予定の企業からの回答から算出した予測値である。

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 「導入済み」の259億円に対し、「導入予定」は281億円と増えている。2019年4月には大企業を対象とした残業時間の上限規制が施行されたが、2020年4月からは中小企業に対しても施行される。こうした背景もあり、RPA活用のニーズは今後も高まっていくと予想される。

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