会計、販売、人事給与などの基幹系システムは既に多くのユーザー企業に導入されている。また、それらを連携させたERP(統合基幹業務システム)を相当の時間と工数を費やして構築し、使い続けている企業も少なくないだろう。だが昨今は、ERPの製品選択や形態に“変化”が起き始めている。
現状維持の基幹系では生き残れない
「2025年の崖」という言葉をご存じだろうか。これは経済産業省が2018年9月に発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ 』で提唱したキーワードである。
同レポートが引用している「企業IT動向調査報告書2016」(日本情報システム・ユーザー協会)では、基幹系システムの稼働年数を調査している。これによると、稼働年数21年以上の企業は、調査時点では回答企業(約1000社)の2割だったが、2025年には6割に達するという。
一方、IT市場の規模に着目すると、既存の基幹系システムを含む「従来ITサービス」と、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けてデータを積極的に活用する「デジタルサービス」の規模は9対1である。この比率は今後急速に変わり、2025年には6対4になると同レポートでは予測している。
つまり、現状の基幹系システムが老朽化する一方、デジタル化による新たなITサービスが拡大していくということになる。既存システムの維持/延命に終始し、新たなIT活用を推進できない企業は、2025年の先にあるDX時代を生き抜くことはできないだろう。これが経済産業省の提唱する「2025年の崖」の意味するところだ。
こうした変化を見据えて、基幹系システムの代表格であるERPでも、既に様々な変化が起きつつある。
国産勢は後継製品投入、外資系のサポート終了対策も急務
ここのところ、国産ERPベンダーによるメジャーバージョンアップが相次いでいる。富士通の「GLOVIA iZ」、OSKの「SMILE V」、NECの「EXPLANNER/Z」などがその代表例だ。いずれも会計、販売、人事給与といったモジュール間の連携を更に強化し、様々なデータを可視化/分析する機能を高めている。いずれも「2025年の崖」を乗り越えられる堅牢かつ柔軟なERPを目指した取り組みとみることができるだろう。
下記のグラフは、年商500億円未満の企業における主要国産ERPベンダーの導入社数シェアを2017年と2018年で比較したものだ。
「SMILEシリーズ」「GLOVIAシリーズ」「EXPLANNERシリーズ」など、メジャーバージョンアップに取り組んでいるベンダーの製品/サービスは、若干だが導入社数シェアを伸ばしている。今後は旧バージョンからの移行や他製品からのリプレースも活発になり、更なるシェアの変動も予想される。
一方、外資系ERPベンダーでも今後、大きな変化が起きそうだ。中でも最も影響が大きいと考えられるのが、2025年に予定されている「SAP ERP」の保守サポート終了である。後継は「SAP S/4HANA」となるが、「SAP ERP」では複数のデータベース(Oracle DatabaseやSQL Serverなど)を選択できたのに対して、「SAP S/4HANA」を使う場合は、同社のインメモリーデータベースである「SAP HANA」への移行が不可避となる。そのため、同じベンダーのERPへの移行とはいえ、十分な時間と費用をかけた計画立案が必要になる。
このようにERPの製品ラインアップは大きく変化しつつある。現在導入しているERPのベンダーはどのようなロードマップを描いているのか、後継製品への移行が必要な場合、必要な労力はどれくらいか、早めに確認しておこう。