米セールスフォース・ドットコムは、2011年8月30日から9月2日まで米サンフランシスコで開催されたイベント「Dreamforce」で「ソーシャルエンタープライズ」を掲げ、プラットフォームの拡充や各種サービスの新機能などを発表した(関連記事1関連記事2)。同社の共同創業者でありテクノロジー統括責任者であるパーカー・ハリス氏に、ソーシャルエンタープライズを実現するための技術や“ソーシャルデバイド”を解消する方法などを聞いた。

(聞き手は大谷 晃司=ITpro

2008年の終わり、マーク・ベニオフCEO(最高経営責任者)がFacebookに刺激を受け、自社の開発者の半分を充てて、社内用のソーシャルネットワーク環境「Chatter」(編集部注:現在は、企業向けSNSプラットフォームを「Salesforce Chatter」の名称で販売)を作り上げるよう指示したと伺いました。それに対してハリスさんは、当初は躊躇したとのことですが、その理由や当時の状況を教えてください。

米セールスフォース・ドットコム共同創業者・テクノロジー統括責任者のパーカー・ハリス氏
米セールスフォース・ドットコム共同創業者・テクノロジー統括責任者のパーカー・ハリス氏

 マークは、ソーシャルネットを企業内に取り込むうえでの様々な課題を見極めることができたのだと思います。彼は多くのものを「Chatter」(同社の企業向けSNSプラットフォーム)で構築したいと考えました。

 ただ、進行中のプロジェクトの多くを中止して、Chatterの開発をすぐにやれと言われても、私自身、多くの顧客と接しており、顧客の要求に対してこれまでやってきたことを突如やめるわけにはいきません。

 社内のエンジニアも同様であり、彼らに明日から別のことをしてくれと伝えるのは無茶だと思いました。その当時は、“ソーシャル化”の動きがこれほどまでに巨大な存在になるとは分からなかったのです。

 「リソースを充当しよう」と言うマークに対し、私はプランを提示しましたが、結局3回も提案し直すことになりました。3回目でマークの情熱がどれだけ大きいものかが分かり、結果的に100人から150人の人員を既存のプロジェクトからChatterのプロジェクトに移したわけです。

このプロジェクトを成功させるための技術的ブレークスルーはあったのでしょうか。

 成功の秘訣は「Chatter」をアプリケーションとしてではなく、プラットフォームとして提供したことだと思います。セールスフォースは13年にわたってプラットフォームを構築してきました。その経験に基づき、プログラミングし直すだけではなく、Chatterをプラットフォームとして追加した。だからこそ「Sales Cloud」上のChatterもあれば、「Service Cloud」上にもChatterが存在できるのです。

プレゼンスやチャットなどChatterの新機能「Chatter Now」でリアルタイム処理が追加されました。

 こうした革新は、多くの企業を買収したから可能になったという面もあります。例えば、インドに本社があったDimdimという会社を買収することで、リアルタイムのプレゼンスを導入できるようになりました。この会社がプレゼンスエンジンを持っていたからです。加えて、リアルタイムでチャットもできるし、今後はスクリーンシェアリングなどもできるようになります。

リアルタイムのデータが増えると、データの保存方法も変わってきます。

 リアルタイムのデータが取り込まれるということは、大量のデータがサービスに流れ込むわけです。問題は、それをいかに保存するか。リアルタイムのデータ活用を実現するには、新しい技術が必要になります。

 例えば性能の面では、(Force.comに追加された)「Streaming API」が挙げられます。自分のデバイスから「ここでChatterのポスティングがあるよ」とか、「Twitterからメッセージが発信されたよ」といったことがすぐに分かります。

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