企業がSaaS(Software as a Service)やPaaS(PはPlatform)、IaaS(IはInfrastructure)など様々なクラウドサービスを利用する今、システム部門やCIO(最高情報責任者)は自社のクラウドプラットフォームの将来戦略を策定する必要に迫られている。米ガートナーでアプリケーションのプラットフォームなどを担当するシニア ディレクター アナリストのポール・ヴィンセント氏に、企業がクラウドで直面する課題とクラウドプロバイダーの動き、そして新たなビジネスを展開するために必要となるクラウドプラットフォームの考え方を聞いた。
SaaSを使っているはずがPaaSになっている
企業は現在、製造部門では製造管理やプログラム管理、営業部門ではCRM(顧客関係管理システム)や販売管理というように、部署ごとに数多くのクラウドサービスを利用している。これらは複数の業務プロセスを横断しており、ソフトウエアにとどまらず、それに付随するプラットフォームまでを使っている場合が多い。
例えば米セールスフォース・ドットコムのCRM/SFA(営業支援システム)をソフトウエア(SaaS)として導入し始めた企業が、やがてアプリケーション開発のためのプラットフォーム(APaaS=Application PaaS)として利用している場合が多くある。
背景にあるのが、ソフトウエアを独自にカスタマイズしたいという企業のニーズである。特に大企業では、SaaSをそのまま使うだけでなく、API(Application Programming Interface)を使って他のシステムと連携させたり、独自にプログラミングした機能を加えたりして、自社に最適化しようとしている。
こうした企業のニーズに応えるため、セールスフォースや米サービスナウといったクラウドプロバイダーは、カスタマイズに対応したプラットフォームを用意している。企業に最適な環境を提供して、自らが作ったエコシステム(パートナーやユーザーを巻き込んだ共存共栄環境)に囲い込もうという狙いもある。
9割のPaaSプロバイダーは特定分野のスペシャリスト
企業のシステム部門やCIOの多くは、現在は部門ごとにSaaSやPaaSなどの利用を許可している段階だろう。しかし今後、企業がデジタル・ビジネス*1を成長させるために、数多くのクラウドサービスを横断的に見る戦略的な視点が必要になる。
*1 デジタル・ビジネス=デジタル技術を使って変革した(「デジタル化」された)ビジネスのこと。ガートナーは、「デジタルの世界と物理的な世界の境界を曖昧にすることにより、新しいビジネス・デザインを創造すること」と定義している。