2018年10月の本連載で、「米国広告主協会(ANA)会員企業の8割弱は、マーケティング業務の内製化を進めている」という話を紹介した。内製化が進む理由には、「データ」「コスト」「スピード」「透明性」の四つがあることも解説した。
マーケティング業務の内製化の流れは米国に限った話ではないようだ。その一端が、2019年1月にスウェーデンを本拠地とするBannerflowが公開した調査結果に見える(編集部注:調査結果は個人情報の登録後に閲覧可能)。調査は欧州企業のマーケティングに関わる意思決定者たちに対して実施したもので、「91%の企業が過去2年間で、デジタルマーケティングに関する何らかの業務を内製化させた」と指摘している。
アンケートに回答した企業の半分以上は「リソースやスキルに課題を感じている」が、それでも「マーケティングチーム単体で十分に業務オペレーションが可能である」と考えているという。着々と内製化に向けた体制を整えているようだ。
2018年のANAの調査には、“対象企業がANAの会員企業に限定されており、会員企業の78%がハウスエージェンシーを使っている”(つまり、内製化をしやすい状態にあった)という前提があった(編集部注:調査結果は個人情報の登録後に閲覧可能)。これに対してBannerflowの調査では、調査対象にハウスエージェンシーを持たない企業を含んでいるという。二つの調査は対象が同じではないため数値を単純に比較できないが、マーケティング業務の内製化が、多くの企業が検討する重要事項になっていることは間違いない。
広告主企業が内製化を意識する背景にあるのが、テクノロジーの進化である。Bannerflowの調査では、回答企業の96%が「アドテクノロジーやツールの進化がマーケティング業務の内製化を加速させている」とした。
これまで企業の “外注先”として、マーケティング関連業務を請け負ってきたエージェンシーにとって、内製化は自身の死活問題に関わってくる。米MarketingLandがデジタルエージェンシーを対象に実施した調査結果によれば、「ほぼ半数(49.8%)のデジタルエージェンシーが『現在直面している大きな課題』として『クライアントによるマーケティング業務の内製化』を挙げていた」という。
広告主企業によるデジタル業務の内製化は「クライアントによる予算削減」として、直接デジタルエージェンシーの経営に重くのしかかる。さらにデジタルエージェンシーはこれから、「人材獲得」でも広告主企業と熾烈な競争を繰り広げなくてはならなくなる。