「ブランドと顧客の関係が、より流動的になり」「新たな要素がパーソナライゼーションに求められ」「マーケティングの役割とマーケターのDNAにパラダイムシフトが起こる」――。2020年のマーケティング環境を予測したある白書に、こうした記述がある。
「ブランドと顧客の関係が流動的」とは、「顧客側に主導権が移る」という意味である。その流れはさらに加速し、顧客は企業に従来よりも高いレベルのサービスを要求し続けるという。そして(自分たち顧客に関する)データ活用の洗練度が高まることを期待し、(マスという集団ではなく)より「個」として認識されることを求めるようになると指摘している。
こういった「パーソナライゼーション」が高度化する一方で、顧客は企業に「テクノロジーを意識させないことも期待している」と、この白書は指摘する。この問題は、登場した当時から今に至るまでパーソナライゼーションが抱えている課題といえるだろう。
興味深いのは、マーケティング部門のリーダーに求める能力についてだ。この白書は、2020年のビジネスをリードするマーケティングリーダーが持つべき能力を七つにまとめている。具体的には、
- 不確実性に対する寛容さ
- 敏捷性
- 意思決定を(部下たちに)分散させる能力
- 組織内の(部下など)他者を鼓舞する能力
- 組織外の(ステークホルダーなど)他者とつながる能力
- 自らの強み、弱み、核となる価値を確実に認識する能力
- 自らの活力、実行力の管理
これらはまさに、デジタルマーケティングを推進させるリーダーが持つべき必須能力といえるだろう。そしてこれらの重要性を、本コラムでこれまでに様々な形で指摘してきた。
実はこの白書は、全米マーケティング協会(AMA)アトランタ支部が、2011年に発表したものだ(編集部注:リンクをクリックすると資料のPDFをダウンロードする)。
2011年といえば、本コラムの連載が始まった年である。AMAは当時から「顧客と企業の関係性」、「パーソナライゼーションの未来」、そして「マーケティングリーダーに求められる能力」について分析していた。白書の発表から8年がたった今になって改めてみても、これらの要素は企業のマーケティング担当者が意識すべきことといえるだろう。
デジタルマーケティングを推進する過程で現場の担当者は、なかなか進まない状況に心が折れそうになることも少なくない。だが、どんなに困難な状況にあったとしても、これらの要素を常に意識し続けなくてはならない。それはもはや、デジタルマーケターに課せられた使命といっていいだろう。