「もはやテレビは、マスコミュニケーションのための端末ではない」――。改めてそう感じさせるデータを、米ニールセンが2019年1月14日に発表した。

 ニールセンはこれまでも定期的に、『Nielsen Local Watch Report』と題して、米国消費者の(主にテレビを中心とした)メディア接触や消費について調査結果を公開してきた。レポートの今回のサブタイトルは“The Evolving Over-The-Air Home”となっている。テレビの視聴形態でOver-The-Air(OTA)が急速に普及しているというのだ。

 OTAとは、テレビ視聴などの通信手段に(CATVを含む) 有線ではなく、無線を使う状態である。壁や窓に設置したアンテナでテレビ局からの電波を受信することで、ブロードバンドインターネットなどの契約を必要としない形でコンテンツを視聴できる仕組みだ。

 言い換えれば、テレビによるコンテンツ視聴が、ネットを通じた視聴とほぼ同義のものとなる。自宅までのラストワンマイルが無線になった状態で多様な動画を利用できる上、視聴者ごとにパーソナライズされた広告の配信も容易となっている。

 同サービス日本には提供されていないサービスのため、イメージがつかみにくいかもしれない。米国のAmazon.comでOTAのテレビアンテナを検索すると、その品ぞろえの幅広さが分かるはずだ。

 このOTA経由でのテレビ視聴者が、2019年5月時点で米国世帯の14%に当たる1600万世帯となった。2010年から2014年の4年間のOTA視聴世帯がわずか約100万世帯しか増加していなかった(1100万世帯から1200万世帯になった)が、ここへ来て急激に伸びて、2014年から2018年の4年間で400万世帯が増加した。

 ニールセンは、これを新しいテレビ視聴者(世帯)のセグメントと位置づけている。特にOTA視聴世帯の中でも、「SVOD(Subscription Video On Demand、定額制動画配信サービス)」を利用している世帯は、2018年5月現在で米国に940万世帯と推計されている。そしてこの視聴者(世帯)は他と異なる行動を取っている。

 これら視聴者は、放送局が流す番組を「受動的」に視聴するのではなく、自分が視聴したいコンテンツを「能動的」に選ぶ。自分の趣味嗜好や生活時間に合わせて、必要とするものだけを選別するという視聴スタイルである。

 そして他の世帯のテレビ利用が「テレビ放送の視聴」が大半であるのに対し、SVOD利用世帯はテレビを「Internet Connected Device(インターネットに接続された端末)」として利用している時間が非常に長い。18歳から34歳、35歳から54歳、そして55歳以上という三つの年齢層が、1日当たりで約1時間はインターネットに接続された端末としてテレビを使っている。言い換えればPCとほぼ同じ位置付けでテレビを利用していることになる。

 SVOD利用世帯は、メディアや広告主からみれば格好の広告ターゲットとなる。PCとほぼ同じ位置付けでテレビを使っていることは、単にテレビ放送を見る視聴者(世帯)よりも、その視聴者の生活や趣味嗜好を把握しやすい状態になっているからだ。

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